『資本主義の再構築』レベッカ・ヘンダーソン

目的主導型で成功する企業には、共通する要素が二つある。

第一に、社会で果たすべき自分たちの使命をはっきり自覚している。目的主導型企業のリーダーは、生き残るために利益の確保が必須であることは十二分に認識しながらも、それを最大の目標に掲げているわけではない。目的主導型企業には、顧客の生活改善に尽くす企業もあれば、雇用の創出を何より重視する企業もある。世界の環境問題や社会問題の解決を掲げる企業もある。いずれのケースでも、短期的な株主価値の最大化よりも、自分たちの使命を優先している。

 第二に、すべての従業員に尊厳と敬意をもって接し、一個の人間として自律を促し価値を尊重する組織を構築することにコミットしている。こうした「王道」を行く「高コミットメント」の組織では、権限が広く委譲されていて、前線に立つ従業員に意思決定権を与え、パフォーマンスが向上するよう業務が設計されている。頻繁に挑戦し、個人として成長する機会が与えられる。高コミットメント企業は賃金が高いが、金銭的な報酬や解雇の脅しでやる気にさせるのではなく、内的動機を重んじる。ヒエラルキーではなく、上司と従業員の間で信頼を醸成し、互いに尊重することを重視する。

ミッションと、仕事の性格の見直しの組み合わせが、創造性やコミットメント、エネルギーを引き出して、熾烈な競争社会で目的主導型企業が生き残ることを可能にし、資本主義を再構築するために必要なイノベーションを加速させる。


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