『浸食される民主主義』ラリー・ダイヤモンド

長年の研究を経て私は、民主主義への最大の打撃は最も目に見えないところ、すなわち文化面で生じることを発見した。

民主主義の衰弱は多くの場合、市民が何を考え、何を信じ、何を大切にしてるかと大きく関係している。蔓延する強欲や、日和見主義、腐敗は、政府に対してのみならず、同胞たる市民に対しての信頼をも打ち砕く。

そして貧困層が地元の権力者にすがりつき、政治のテーブルから零れ落ちるパンくづを奪い合うことで、社会は分断されていう。

そのような社会では、誠実に振る舞う人などいないと思っているため、ほとんどの人々が賄賂を要求し、支払い、また票を倍場したり、裏切りを警戒したりする。

1990年代、ハーバード大学の政治学者ロバート・パットナムは、イタリア南部が北部に比べて貧しく、統治が行き届いていない理由を説明した古典的な著書の中で、この現象を見事にとらえていた。格差の根本的な原因は、社会関係資本の不足であることを彼は発見した。

社会資本関係とは自分たちのコミュニティや個人の環境を改善するために協力しあうことことを可能にするような、「信頼、規範、ネットワーク」のことである。

民主主義が正しい軌道に乗っているとき、パットナムが言うところの「市民共同体」になることで、人々は互いに信頼しあい、より大きな目的を追求するべくあらゆる方法で団体を結成する。

そこでは、市民的な関与の分化と責任あるガバナンスの実践が相互に強化しあう好循環が生じる。すると発展が続き、民主主義は繁栄する。


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