ジョセフ・ヘンリック

そもそも、文化はいかにして出現するのか。ヒトの集団は、その土地の環境に適応するための道具や選好や技術をいかに生み出すのか。

文化や文化進化は、他社から学ぼうとする遺伝的に進化した心理的適応の結果なのである。つまり、他者から学ぶ能力を備えた脳を作る遺伝子に対し、自然選択が有利に働いたのだ。こうした学習能力が、集団内で長期にわたって発揮されると、便利な道具をまねて作ったり、動植物に関する豊富な知識を共有したりといった、数々の適応行動が生まれてくる。こうした行動はそもそも、学ぼうとする頭脳が集団内で長期にわたって相互作用を繰り広げた結果、意図せず生まれたものだ。そう考えると、「文化的説明」は「進化的説明」の一つになる。

文化から習得した基準や価値観は、教育や訓練を受けたり、試行錯誤を重ねたりする際の努力や粘り強さに影響を及ぼす。

成功者やスキルの高い人をまねる傾向(成功・スキルバイアス)の重要性が明らかになっている。特に重要なのは、正解を求めようとするインセンティブの有無にかかわらず、無意識のうちにこうした学習のメカニズムが働くという点である。

 


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