サプライチェーンマネジメント論

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第8章 サプライチェーンの管理

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21世紀への移行に伴い、ビジネス界ではこれまで以上の大きな揺れが見込まれる。過去10年間市場をリードしていた会社は多くの場合、厳しい運命の逆転に直面している。合併や吸収によって多くの市場の形が変わり、ヨーロッパ企業の出現とグローバル競争によりゲームのルールは常に変化してきた。既に述べたように、これに加えて市場からはこれまで以上のサービスと質の向上が要求されている。これらの圧力は組織に対して新たな要請をもたらした。すなわち、反応性の必要である。

 反応性の高い組織は、顧客をビジネスの中心に引き込もうとするばかりではなく、反応のスピードをあげ、その信頼性を高めることを第一の目的としてシステムや手順を構成している。伝統的な組織は経営陣と官僚主義の層が幾重にも重なって身動きが取れなくなっている。このような企業が新たな市場において勝ち残るチャンスはほとんどない。また現在多くの会社が取り組んでいる、経営層を移動するだけのいわゆる「組織図を平らにする」改革に満足している企業も、その「階層くずし」に顧客にサービスを提供するネットワークとシステムへの改善が伴わない限りは勝ち目がない。

 ロジスティクス・ビジョンの創造

 サービスを創造することは究極の挑戦である。競争力の高いパフォーマンスを向上させるサービス戦略を開発するのも簡単ではないが、最大の困難は戦略の実行にある。一貫性と継続性をもつ原理に基づき、質の高いサービスを提供できる組織をいかにして開発すればよいのだろうか。

今日、ほとんどの企業において「物流ミッション別報告書」は、ビジネス構想を明示したものという考えが一般的である。物流ミッション別報告書はビジネスの目的や範囲、展望を明らかにしようとしている。今や、組織がビジネスにおける総括的で鍵となる構成要素としてこのような報告書を持つことは決して珍しいことではない。しかし、いくつかの会社は企業のロジスティクス・ビジョンを明確にすることで重大な利益を得る可能性のあることに気づいた。

ロジスティクス・ビジョン報告の目的は、いかに顧客との関係を深め、このビジネスにおいて優位な地位を確立するかという原則を明確に指示することである。このような報告を作り上げることは決して容易でない。誰をも暖かな気分にさせはするが、活動の指針を与えないあいまいな「母性的」報告に成り下がる危険性が常にある。

理想を言えば、ロジスティクス・ビジョンは「いかにロジスティクスとサプライチェーン・マネジメントを利用し顧客への価値を創り出せるか」という単純な問題に沿って作られなければならない。この理想を実現するためには、顧客価値はどのように創り出され、ビジネスが競合する市場に持ちこまれるのかということについて、詳細な理解が不可欠である。バリューチェーンの分析はこの調査における基本要素となるであろうし、組織の中心的適性や能力を明瞭にすることも同様である。「わたしたちが優位である活動とは?」「競争相手と比べて異なる点は?」といった問いかけがロジスティクス・ビジョンを創り上げるための第一歩である。

以前は「より良く、より速く、より安く」の三つが顧客に価値を提供できるロジスティクス・マネジメントの方法を要約していると言われていた。よいロジスティクス・ビジョンの条件とは、この3つの目標に到達するための地図を提供していることである。

従来型組織の問題

ロジスティクス・マネジメントのプロセスについて経験豊富なオブザーバーや解説者たちの間では、ロジスティクスのコンセプトを実行する際の主たる障害は組織体系にあると一般的に合意されている。別の言い方をするなら、この決定的な経営の世界を変えようとする際に最も邪魔になるのは、現在有名企業の多くで重荷となっている閉鎖的で硬直した組織構造なのである。

(p217)

組織的変化の必要性を認識しない、または実行への意欲に欠けた企業には、統合されたロジスティクス・マネジメントのもたらす競争力の優位性が実現できないという大きな危険性がある。ここで議論しようとするのは、劇的に激しい競争を伴う品質の高いサービスの供給への市場の要求であり、それは組織に対する考え方についてパラダイムシフトを招くだろう。

統合化されたロジスティクス・マネジメントのコンセプトは、供給源とユーザーとの間にある情報や材料の流れをシステムとして調整し管理するものとして広く理解されている。しかし、それは広く実行されてはいない。材料と製品の流れを顧客に近づけていくプロセスの各段階は、最適化の法則をべースとしている。別の言い方をすると、目標はコストを最小化させると同時にロジスティクス・パイプラインに固定される資産を減らし、顧客サービスを最大化することなのである。

しかしながら、従来型組織においてこれは切迫した問題となる。ほとんどの企業は機能をベースに組織されている。つまり、彼らは機能別に責任を分割する方法を選んできたのだ。すなわち、そこには購買機能、生産機能、販売機能といった部門が見られるだろう。典型的な組織図は図8ー1のようなものになる。

(図8-1 機能別組織)

Purchasing     購買

Production     生産

Distribution   流通

Sales          販売

従来型組織の各「垂直的」機能は、一般に自分の管轄する部を自らの「テリトリー」と考えがちな部長に率いられている。実際多くの会社ではこれら機能のヘッドが「領主」として多大な力を振るい、他の「領主」の不当な侵害から、妬みを持って自分のテリトリーをガードしている。

さらに従来型組織のなかの機能的または垂直的位置づけをより強固にしているのは、

予算配分システムである。典型的には、各機能はそれぞれが使い切るだけの財源を調整するために組まれた予算で運営されている。それはあたかも、あらゆる事業活動の最重要課題が財源の消費を調節することであることを前提に企業が動いているかのようだ。しかし実際のところ、最先端を行く会社は、ビジネスの唯一の目的は利益を生み出すアウトプットを創り出すことであり、インプットではなくこのアウトプットをもとに、組織を構成し計画をたて調整すべきであると、ずっと以前に気づいていた。

組織構成や計画及び調整方法の代案モデルについては後ほど詳しく見ることにして、まず最初に、統合化されたロジスティクス・マネジメントの成功を阻む、従来型組織のもつ本当の問題に焦点をあてることにしよう。

 機能別境界が在庫を増やす

もしも個々の機能が予算によってそれぞれのコストを「最適化」するよう奨励された場合、これはしばしばシステム全般に渡って在庫を大幅に増やすという犠牲を払う結果になるだろう。たとえばもし、生産部門が製品単価を最小に押さえるために長期的な生産計画に従いながら大量生産を行えば、通常の必要量よりも多くの在庫を生じさせることになる。同様に、購買管理部門が大量購入によって安く材料を仕入れようとすると、製品に先行する未加工材料の在庫が過大となるであろう。似たような在庫緩和は組織内の境界におけるサプライチェーン全般にわたって存在するし、また実際、組織間の境界にも存在する。

 こういった在庫増加は財政上重荷となり運転資本に過剰な負担となるだけでなく、最終需要を「見え」にくくしてしまう。そのため上流部門は、下流部門の本当の需要が何なのかはっきりしたビジョンをまったくもたず、ただ直前の通知による(より多くの場合、通知さえもなく)「再発注時点オーダー」に襲われるのだ。図8-2はこの点を説明している。

図8-2 需要を隠す在庫

National distribution center    中央配送センター

Regional distribution center    地域配送センター

Stockikst                       倉庫

Inventory level                 在庫量

Reorder point                   リオーダー・ポイント

 不透明なパイプラインコスト

前述した問題と深い関係にあるのがコストの「透明性」の問題である。これは、機能エリアを流れる物品のコストは容易に測ることができないという意味である。このため、別々の製品を混ぜて別々の顧客に供給する本当のコストはほとんど表に出ない。繰り返すが、従来型組織は通常機能ベースでしかコストを把握していないことが問題なのである。かなりハイレベルの集団においてさえそうなのだ。このため、わたしたちは全体としての輸送コストは把握しているものの、顧客別のコストや、たとえば中央から地域配送センターと地域内のスーパーマーケットへの配送といった、性質の違いによるコスト変化については必ずしも分かっていない。生産品にかかるコストを見積もろうと試みた場合、普通、必要にせまられておおざっぱな配分手続きを求める。第3章ですでに述べたとおり、このところ「スループット会計」と「活動基準原価計算(ABC)」への関心が大いに高まってきている。両者とも発生と同時にコストをはっきり把握し、それをもとに全体的なパイプラインコスト認定を容易にしようとする試みである。問題は実在するわけではない。原因は単に、わたしたちが創ったコストシステムが、流通およびアウトプットコストよりも機能およびインプットコストをチェックするためのものであるからなのだ。図8-3がこの点を示している。

図8-3 代替コストの概念

Market/output costs    市場・アウトプットコスト

Functiona/input costs  機能的・インプット コスト

 機能別境界がプロセス・マネジメントを妨げる

顧客需要を満たすプロセスはインバウンド・サプライから始まり、製造または組立てのオペレーションを通過し、顧客への分配を経由して進む。理論上このプロセスを管理する理想的な方法はコンピューターシステムと同様で、断片的な、水も漏らさぬ堅いセクションに分けるやり方ではない。しかしすでに見てきたように、従来型ビジネスでは多かれ少なかれこうなっている。これは非効率であるばかりか、競争という面では有効性の損失を招くのは確実である。

受注から納品までのサイクルにおける変異の原因の多くは、たとえば、非効率なプロセスから必然的に発生する不定性から起こるが、これらのプロセスは機能間の仲介を管理するために作られなくてはならない。一例として、オーダーを処理する時間は従来型組織の生みだす書類さばき、チェック、再チェックのおかげでしばしば意味なく引きのばされる。組織は組織的に成長するため、「真新しい一枚の紙」からスタートするよりも、現存するプロセスに「パッチワーク」のように付け加える傾向が強い。その結果、使用中のシステムは全体を統一的にマネジメントしようとする意図よりも、多くは歴史に負っている。この現象は、無能な経営者たちのおかげでさらに複雑になっている。彼らは慣れ親しんだ環境から引き離され、「大きな絵」を見せられることを好まない。彼らはむしろ自身の狭い機能エリアにおける断片的な改善のほうに焦点を合わせようとしがちである。

ロジスティクス・パイプラインのスムーズな流れを達成するには、終始一貫したプロセスマネジメントを促進しようとする志向が必要である。この原理は工場に見られるプロセスと比較することができる。例えば石油精製では、一貫したプロセスによって管理され、隣接した個々の活動の連続としてではなくひとつのシステムとしてコントロールされれば最高の効率を達成できることは確実である。

これらのそれぞれの分裂したプロセスによるひとつの組織への負担、さらに言えば経済全体への負担は、推測にすぎないが莫大に違いない。

従来型組織は顧客に多くの顔を示す

伝統的組織にとってもっとも厳しい批判は、「ひとつの顔」を顧客に示さないというものであろう。顧客は単独の組織とではなく、大勢の組織とビジネスをするようしむけられている。

この批判は、例えば顧客がある注文についての情報を求めた場合、その会社のセクションをつぎつぎとたらい回しされるといった場合に生じる単純な問題以上のものである。こんなことはもう十分過ぎるほど発生しているだろう。本当の問題は、一人の人物もしくは一つの課に受注から納入までを通じた顧客の問い合わせ、つまりは顧客サービスを管理する権限を与えられていないことにある。

ここで少し、従来型組織のオーダーを処理するやり方について考えてほしい。典型的な例として、受注に始まる一連の活動がある。受注のポイントはセールス機関にあるだろうが、それからクレジットコントロールへ行き、それから製造部門を通過するか、在庫の必要な場合は倉庫に行くだろう。一旦オーダーに対して生産もしくは組み立てが完了されると、その後は配送及び運送部門の責任下にはいる。そして同時に、B/L、送状、請求書などの文書発生を含む別の処理が行われる。問題は、これらの活動は段階的で、平行というよりは直線的に行われることにある。各機能はそれぞれの務めを果たし、そのオーダーを次の機能に渡すのだが、それはまるで各段階ごとに注文を「塀のむこうに投げる」ようだ。図8ー4でこの古典的なプロセスを描写している。

図8-4 オーダーの管理

Traditional sequential order processing system      伝統的な段階的オーダー処理システム

 ロジスティクス組織を開発する

何人かの解説者が、上で要約した問題の解決策は、購買、製造、流通の任務を連結するロジスティクス機能の形式を持ったよりハイレベルな権限を作り上げることにあると指摘した。一見魅力的に思えるが、これでは伝統的組織が作り出す根本的な矛盾の解決にはならない。単にマネジメント層を増やすだけだ。同時に時代の風潮が組織の「平坦化」に向かったとしても、この解決策が広く受け入れられるとは思えない。

その代わり、従来型の「垂直型」組織をリストラし、「水平型」で、市場に適合した組織の創造を導く革新的な解決法を探さねばならない。図8-5と8-6は、「垂直型」と「水平型」組織を対比させている。

「水平型」組織には多くのはっきりとした特徴が備わっている。それは:

・職務ではなく、プロセスにそって組織されている。

・平坦で層を成していない

・総合機能チームをベースにしている

・市場の実績を基準にしている

機能よりもむしろプロセスに焦点を当てることが水平型組織への鍵となる。プロセスマネジメントの基本教訓は、顧客価値はプロセスを通じて創られることである。このため、プロセスマネジメント実現への理論は統合にある。

ほとんどの組織では限定された数のコアプロセスしかない。以下のプロセスは、ほとんどのビジネスにおいて中核と認められるだろう。

・ブランド開発(新製品開発を含む)

・顧客開発(エンドユーザーに対する忠誠を築くことが最重要課題とされる)

・顧客マネジメント(仲介人との関係を築く)

・サプライヤー開発(上流の同盟関係を強化する)

・サプライチェーン・マネジメント(キャッシュ・ツー・キャッシュ・プロセス)

プロセスマネジメントに重点をおいた典型的な企業は、機能横断チームによるマネジメントがベストであることを認識している。これらのチームは、機能エリアから抜擢されたスペシャリストたちによって構成されており(いまやこれは『優秀な人材センター』である)、そのリーダーは、このプロセスチームをマーケットに則したゴールの達成に目標を定めた「インテグレーター」である。このような企業では、すべてのレベルのマネージャーははっきりと異なったタイプのスキルを要求される。同時に報酬システムも、水平的に、つまり標準化されるように変える必要があるが、このため伝統的な昇進・昇格の機会はより減少する。

「垂直」から「水平」への変化にあたっては多くの挑戦が生じるであろうが、これはマーケット主導型ロジスティクス戦略の実践に欠かせないものだ。

この変革達成は、ロジスティクスが本質的にプランニング・オリエンテーションであるという認識から始まるであろう。つまりロジスティクス・マネジメントのプロセスが、製造計画と資材所要量計画とをひとつの方向へ、また配送所要量計画とを別方向へと連結させるのだ。どのような組織でもその目的は、製造が市場の要求するもののみを造り出し、同時に購買が製造の即時要求に応えるものを供給することにあるはずだ。このみごとに明白なアイディアを現実化するにはどうすればよいのだろうか?

鍵は、オーダーとそれに関連する情報の流れこそがビジネスの要であることへの認識にある。言うまでもないことではあるが、どんな企業組織にとっても、オーダーを創り出し、そのオーダーに応えることが唯一の合理性である。企業の行動はすべてこのプロセスを機能させることに直結し、そしてこのプロセス自体が組織のデザインやその計画およびコントロールシステムに反映されなければならない。

これらはすべて、ビジネスの従来型機能がそのプロセスを支えてきた企業活動を統合するものとして、オーダー遂行プロセスがデザインされるべきだという結論へと導かれる。この移行をサポートするには顧客オーダー・マネジメントシステムの開発が最重要条件である。

顧客オーダー・マネジメントシステムは、情報システムと、需要を満たすための物品の物理的な流れとを結びつける枠組みである。これを成功させるには、予測、所要量計画、原料と製造のコントロールおよび購入の集中管理が要求される。

図8-7はオーダー・マネジメントシステムの鍵となる役割と責任について示している。

図8-7 顧客オーダー・マネジメント

Customer order management            顧客オーダー・マネジメント

  • Inquiries                          問合せ
  • Orders                             オーダー
  • Pricing                            価格設定
  • Availability                       在庫
  • Delivery                           納品
  • Status                             状況
  • Options                            オプション

・Forecasting                        予測

・Distribution requirements planning     配送所要量計画

・Bills of material                 原料リスト

・Master production schedule         製造スケジュール

・Materials requirements plan        原料所要量計画                                 

・Purchasing                         購買    

・Material/production control        原料・製品管理

顧客オーダー・マネジメントシステムの心臓部にあるのは、マーケット主導型の所要量計画である。このプランへのインプットは、問合わせとオーダー、価格変更、プロモーション活動、製品在庫に関するデータと情報である。この情報が予測のベースとなり、その上で所要量計画を動かすのだ。これと平行して、目下のオーダーを満たすプロセスがある。これらは分離しているわけではなく、情報システムを通じて密接に統合されている。

顧客オーダー・マネジメントシステム改良のための2つの具体的なステップを以下に提案したい。:

1 「付加価値のない」活動を排除する

現存するオーダープロセスシステムを振り返り、チェーンの各要素及び各リンクについてそれぞれが生み出す価値と加わるコストを鑑定するよう厳しく審査しなければならない。ここでいう「価値」とは顧客価値を意味する。つまり製品のトータルな有用性に貢献するか、あるいは顧客の目にとまって彼らに喜んで購入してもらえるような価値のことである。

既に記したが、多くのサービスプロセスにおいて使われた時間の多くは付加価値のない時間であるというのが現実なのだ。例えば、ペーパーワークの遅延、製品が在庫として倉庫に並んでいるあいだに「消費された」時間、チェックにつぐチェックにかかる時間、まだまだある。目標にすべきなのは、付加価値のない活動すべての排除もしくは削減だ。

オーダープロセスシステムは、付加価値のない活動を見つけ出して取り除くのにすぐれた狩猟場となる。ペーパーワークのやり方をはじめとす各段階の活動、いや、そもそもその活動の存在理由それ自体まで、誰も口にしたことがない問題がしばしば判明する。この最終目標はおそらく、プロセスの段階を結合する機会を探し、似たような仕事をする別々のグループの人々を統合し、ペーパーワークと報告書を減らしてプロセスを単純化することにあるはずだ。常に覚えておかなければならないのは、顧客の要請に接することで消費される時間の大部分は実際過剰であり、その排除によって提供するサービスの一貫性と信頼性を改善し、結果として顧客の目にとまる「価値」を向上させるということである。

2 オーダー遂行グループ

システムの観点から見て、オーダー・マネジメントのプロセスは上記の内容に沿って改良可能だが、「プロセス構造」にはどんな改善余地が存在するのだろうか?

いくつかの企業はオーダー・マネジメントに責任を負う機能横断、部門横断チームのアイディアを試みた。このチームはオーダー遂行グループと呼べるだろう。このようなグループの背後にあるのは、オーダー・マネジメントのために、すべての活動が各自の責任によって分離され全体を構成しているような組織機構を持つよりも、これらの活動を組織的かつ物理的に集合させるべきだという考えである。つまり、プロセスの各段階を別活動として見るのではなくそれぞれを一まとめにするということだ。その際人間も一箇所に、理想を言えば単一のオープン・プラン・オフィスに配置する。このためオーダー遂行グループには、セールス、クレジット・コントロールと会計、製造計画、輸送計画など、オーダーを現金化するプロセスにおいて重要なビジネスに携わる誰もが含まれることになるだろう。

多くの異なる顧客に対応する大きなビジネスでは、このチームが複数要求されることになるだろう。実際、最重要の顧客に対しては、関係を管理するためにひとつの専属チームが必要かもしれない。

これらのグループはしばしば劇的な効果をもたらす。なぜならばオーダー充足プロセス中のキーパーソンがすべて集合し、オーダーという共通事項にそって結合するため、彼らはより適切に問題を処理し、障害を除去することができるのだ。チームワークが部門間の対立意識をカバーするにしたがってオーダー・サイクルタイムは劇的に減少する。問題処理の新たな方法が浮上し、付加価値のない活動は更に排除され、もしも顧客サービス問題が持ちあがれば即座に解決できる。これもすべてのキーパーソンが互いに密接に結びついているからである。

スコーンバーガーは、製造「細胞」、つまり互いに結びついた活動を平行して行うマルチ機能チームの概念を示し、それがオーダープロセスにおいていかに効果的に仕事を遂行するかについて多くの実例をあげている。彼が引用した一例に、アールストームというフィンランドの企業があるが、そこではオーダープロセスのリードタイムを1週間から1日へと減らし、リードタイムの差異は6週間から1週間に下がった。別の例では、北アメリカのナシュアコーポレーションがオーダー受注のリードタイムを8日間から1時間へと減らし、同時にスペースも40%削減し、顧客からのクレームも70%減らした。

この取り組みはリレー競争ではなくラグビーの試合にたとえられていた。つまり密接に統合された同僚たちが一緒にフィールドを走りながらボールをパスしてゆくのだ。リレー競争では、チェーンの先走者からバトンを受け取るまで誰も走ることができない。最終的な結果として、このサービスプロセスにおける最重要部分のスピードアップと同時にアウトプットの品質改善が可能であり、それゆえ大きな競争優位が達成されるのだ。

製造上のコンテクストでは、顧客オーダー・マネジメントシステムは製造計画および資材所要量計画と密接して結合されていなければならない。理想をいえば、組織においてオーダーとその遂行に関わるすべての計画とスケジュールは組織的に結合させるべきなのだ。

変化への手段としてのロジスティクス

市場と同様に、テクノロジーと競争力の変化はこれまでにないレベルで上昇しており、組織的変化はより切迫した問題となりつつある。パラドックスは、組織構造が固定、むしろ硬直しているために、彼らが存在する環境といったものを少しも変えられないことだ。

市場の多様性へ向けて、海外調達、および製造工場で使用される物品や、これらに関する情報の複雑な流れのコーディネートなどを含め、トレンドは産業のグローバリゼーションに向っており、そのため現状の組織構造の不適当性が鋭く強調されている。わたしたちの考えでは、組織変化の原動力はロジスティクスである。

このグローバルマーケットの競争で生き残るにはロジスティクス志向の組織が要求される。必要なのはまさに、機能重視からプロセス重視への移行である。このように革新的な変化は組織の再編成を引き起こし、そのため機能横断業務の流れの管理がキータスクとなる。ヒューレット・パッカー社は、機能ではなく市場に適合したプロセスにそって組織を再構成した企業の一例だ。オーダーの遂行がコアプロセスとして認識されているため、グローバルスケールに合わせ、単一のオーダー・マネジメントシステムがオーダーの受注とマネジメント、工場オーダー/出荷プロセスを結合している。このコア・プロセスは、オーダーから納品までのロジスティクス・パイプラインを「一貫」で見ることのできる共通の情報システムによって支えられている。(図8.8参照)

実際、情報技術における躍進のおかげで、わたしたちが述べるタイプの組織的変化が可能になった。いまや組織構造を決定付けるのは情報ネットワークである。別の言葉で言うなら、パイプラインの一端であるマーケットからもう一端である供給点に流れる情報が、だんだんと組織を形作るのだ。その逆ではない。

このような変化は、この本の前部で述べたように、企業が何を「コア・コンピタンス」と考え、それ以外のすべてをアウトソースしようとすることに狙いを定めるトレンドによって加速される。別の言葉で言えば、将来のビジネスはほとんど、バリューチェーンにおいて自分が異なる優位性を持っていると信じる活動だけを遂行し、ほかの活動はすべてパートナーや協力メーカーあるいはロジスティクス・サービスプロバイダーが行うようになるかもしれない。このようなケースでは、サプライチェーン内の有機体を流れる情報と物品のコーディネートの必要性が最優先となり、プロセス志向のマネジメント業務としてロジスティクスの主要任務がより強調される。

 図8.8 ヒューレット・パッカード社におけるグローバルロジスティクスコーディネーション

  

Process ownership      プロセス所有権    

Business unit families     ビジネスユニット

Computer systems           コンピューターシステム

Computer products          コンピューター製品

Measurement system         測定システム

Service & support          サービス・サポート

Base process               基幹プロセス                        

Order fulfilment           オーダー遂行

Product generation         生産

Financial reporting        財務報告

Information architecture   情報構造

組織の直面した環境変化に対する挑戦について簡単に振り返りながら、わたしたちは伝統的に組織を分割し、費用効果の高いカスタマーサービスの要請を妨げてきた「壁」を打ち砕く必要性を強調してきた。明らかに大規模での「パターンの打ちこわし」が必要だ。この重大な変化を成功させる唯一の方法は、組織のトップのリーダーシップである。卓越したロジスティクスを成した一握りの企業が、トップの指揮するプロセス変革を通じてそれを成し得たのは偶然ではない。ゼロックス、ヒューレット・パッカード、IBM、フィリップスといった企業は皆、機能をベースにした業態からマーケット志向をベースにした業態への移行という、現在も進行中である痛みを伴う変化をしばしば経験している。変化の勢いは企業によって異なるが、変化への機動力は皆同じ、すなわちロジスティクス・マネジメントを通じた優秀なパフォーマンスへの探求である。

インテグレーションの必要性

反応性の高い組織に向けて我々が述べてきた挑戦が暗示する最大のことは、おそらく統合に関連したプライオリティであろう。これは組織内の統合のみならず、上流のサプライヤーと、下流の流通業者と顧客との統合をも含む。この統合は「垂直的」ではなくロジスティクス的である。つまり我々はサプライチェーンの所有権や支配を暗示しているのでなく、それよりもむしろ、情報を通じた組織の結合をより強調しているのだ。

以前第7章で述べたように、情報技術革命によってロジスティクス・マネジメントのすべての質は劇的に変化した。情報システムは、サプライヤー同様顧客との関係も見直すよう企業にプレッシャーを与える原動力となった。他組織との相互連絡がない真空状態のような中でのビジネス管理はもはや不可能だ。

サプライチェーンの統合は上流および下流双方のプロセス統合を含む。プロセス統合とはつまり、バイヤーとサプライヤーによる共同作業、共同製品開発、共通システムに情報の共有である。いくつかの企業にとってはこのようなアイディアは未だ想像もできないだろうが、高品質の統合されたサプライチェーンの拡大が市場の実績を支配している将来図がはっきりと見えている。

とはいえ、多くの産業においてプロセス統合のコンセプトはだんだんと受け入れられつつある。例えばこの10年ほどで西ヨーロッパの自動車製造企業の多くが、分裂した案件中心のビジネスから、高度に統合された関係を基盤にするサプライチェーンへと著しい変化を遂げた。ローバー社のような企業が今や「拡大した企業」の哲学を受け入れている。拡大した企業では継ぎ目のない「一貫した」プロセス製作を目標とし、それによって革新的な製品が作られ、より高品質かつ短い時間で市場に供給される。しかも真の意味での価格は、過去のいかなる値と比べても著しく低い。これはいくつかの手段を通じて達成された。それは:

1.サプライヤーの合理化

80年代、ローバー社が取引する部品、原料およびサービスサプライヤーは2000を軽く超えていた。90年代、その数は500以下に減った。残ったサプライヤーとローバー社は際立って密接した関係を作り上げ、現在はそれらのサプライヤーがだんだんと部品よりもシステムを提供することを目指している。例えば、ひとつの一次サプライヤーが、あるモデルのダッシュボードにすべての責任を持つ。コントロール、ディスプレイ、ワイヤリングのすべてがひとつのユニットとして取り付けられるばかりとなっており、すべてのユニットがジャスト・イン・タイムベースによって納入される。

2.サプライヤー開発プログラム

大多数の企業同様ローバー社も、調達活動について、主に購入機関であり最低価格で購入する任務を負っていると考えていた。このような場合の典型として、ある特定の部品を供給するのに複数のベンダーが使われており、「互いに決着をつける」要素を含んでいただろう。

現在、サプライヤー開発が伝統的な購入機関に取って代わった。この裏にある考えは、ローバーのスペシャリストによる機能横断チームがサプライヤーと密接に取り組み、サプライヤーのプロセスの改良点をローバー社のプロセスにおける共通問題と同様に探求するというものである。

3.初期サプライヤーをデザインに参加させる

今日の自動車業界における変革の多くはサプライヤーから起こった。ABS(ブレーキシステム)、エンジンマネジメントシステム、改良型サスペンションシステムといった開発は主にサプライヤーから自動車業界に渡った。これらのサプライヤーを新製品開発プロセスにより関係づけることで、新製品において絶えず変革がなされ、そればかりか、もっとシンプルでもっと費用効果のあるデザインがしばしば創られることがわかった。

 現在、自動車の製造と維持をするためのトータルコストの中で、かなり多くの部分が「計画された」コストと考えられている。今日の挑戦はこれらのコストを「計画からはずしていく」方法を探すことなのだ。

4.情報システムの統合

自動車業界は最初に「ペーパーレス」を実践した産業のひとつである。ITを使ってサプライチェーンにおける上流下流双方の情報の流れを高める手段を提供した。電子データ交換(EDI)は「ジャスト・イン・タイム」哲学の普及とあいまって、透明な情報システムによる利益は無視できないという認識をもたらした。これによってサプライヤーは現在、あらかじめ通知されたローバー社の生産スケジュールを基にプラントへの材料の流れを管理できるのである。オーダーもない、送状もない、請求書もない――あるのはただひとつの情報のソース、それを基にタイムリーな機械的反応がおこり、それがサプライヤーへの支払いの引き金となるのだ。

5.在庫の集中化

ローバー社の例に見られる拡大した企業は、上流のサプライヤーのみならず、完成した製品の到達するディーラーネットワークという下流の流れも含んでいる。伝統的にディーラーたちは顧客の要求に合う合わないに関わらず自動車をストックしていた。もしも顧客がそのディーラーの持っていない色やオプションを要求した場合、そのような車を持つディーラーとの間で「交換」をアレンジしなければならなかった。これに変わり現在ローバー社は在庫を集中化し、社の責任において管理を行っている。ディーラーはデモンストレーション用モデルしか持たないが、ローバー社のシステムとのオンラインアクセスを持っており、顧客の選んだ車の在庫状況と納期を即座に確認して伝えることができる。もしもその車がストックになかった場合、ディーラーは直接ローバー社の生産スケジュールに注文登録でき、オーダーに合った車が実際に作られるのだ。

ネットワークとしてのサプライチェーン・マネジメント

わたしたちがこの章で述べてきた新しい競争パラダイムは、相互依存のネットワークの中心に企業を置こうとするものだ。互いに能力と才能を補完しあう同盟であるこのネットワークは、ひとつの統合されたサプライチェーンとして他のサプライチェーンと競争する。

このように根本的に改革された競争機構の管理には、伝統的モデルに採用されていたのとは異なるスキルと優先順位が明らかに要求される。ネットワーク競争の世界でマーケットリーダーになるには、内部プロセスと同様、ネットワーク・マネジメントも重視する必要がある。

この新しい競争環境への移行にあたり、組織は多くの問題や挑戦と対面するだろうが、もっとも重大なのはおそらく次にあげるものであろう。

1 集団戦略開発

伝統的にサプライチェーンのメンバーは、自分達がマーケティング・ネットワークの一部であるとは考えもしなかったため、自分達の戦略を互いに共有することもなかった。ネットワーク競争を真に効果的にするためには、著しくレベルの高い共同戦略開発が必要である。つまりネットワークメンバーは、ネットワークの戦略的目標とそれを成し遂げる意味について共通の合意を持たなければならない。

2 ウィン-ウィン思考

マーケティング・ネットワークの構築を成功させるために必要な最大の挑戦の一つは、おそらくしばしば過去に存在したバイヤー/サプライヤーとの本質的な敵対関係からの脱却であろう。現在、ネットワーク・パートナー間の協力は普通実績の改善につながると一般に認識されつつある。そして問題となるのが、改善された実績の成果を様々なプレイヤー間でいかに分配するかについての決定である。「ウィン-ウィン」は50/50である必要はないが、共同事業の結果として最小限すべてのパートナーが利益を得、楽になるべきである。

3 オープン・コミュニケーション

マーケティング・ネットワークを変える最大の機動力の一つとなったのは情報技術の出現で、これによりサプライチェーン・パートナーとの情報交換はより容易で好都合なものとなった。EDIは情報ハイウェイの先駆けであった。現在では、いくつかの産業において一貫したパイプラインの視覚化を実現可能なものにしている。アメリカ合衆国の繊維産業は、小売店から始まって衣服製造、生地製造、化繊製造へと伝達されたセールス情報の共有によって驚異的な利益を上げた。すべての関係者が「同じ譜面で賛美歌を歌う」ことで市場変化へのより迅速な対応を、より少ない在庫、より低い廃棄リスクとともに成し遂げた。ネットワーク・マーケティングがその潜在能力を最大に発揮するには、サプライチェーン全体のすべての関連情報をビジュアル化し、透明化することが不可欠である。オープンブック会計は、この透明化へ向かうもう一つの明示であり、これによって上流と下流のコストデータを共有し、各パートナーの利益を互いに見ることができる。

プロセス統合とECR

クイック・レスポンス・ロジスティクスの初期実験については以前第7章で述べたが、その結果このコンセプトはサプライチェーンにおける共同作業の基本として急速に広まった。

食品分野におけるこの開発は“Efficient Consumer Response (ECR) ”と呼ばれてきた。ECRとは、より短い時間と低いコストで最上の顧客価値の供給を実現するための数ある関連哲学及び技術をカバーする包括的な名前である。製造業/小売業の連合圧力団体であるECRヨーロッパ・エグゼクティブボードは、企業が大きな利益を成し得る14の要素を3つの広い項目下にわけて特定した。

需要マネジメント

・戦略および能力開発

・品種の最適化 

・プロモーションの最適化

・イントロダクションの最適化

サプライマネジメント

・サプライヤーの統合

・信頼性のあるオペレーション

・生産の同時性

・継続的な補充

・クロスドッキング

・自動化されたストアオーダー

テクノロジー手段

・EDI

・電子決済

・アイテムの記号化とデータベース管理

・活動ベースのコスト

ECRの原理は、サプライチェーン内でのパートナーシップにより、小売店でのよりよい棚スペース配置、無駄なプロモーションや新製品紹介の削減、より効果的な物理的補充を通じて著しいコスト削減が達成できるというものである。これらの目標到達への鍵は情報の共有、特にレジに集結し、直接サプライヤーに移されるセールス情報の共有にある。

この共有された情報を使い、製造業者と小売業者はサプライチェーンを通じてより大きな消費者価値を作りあげることが可能だ。とりわけ利益を生むことができるのは4つのキーエリアだと指摘されている(表8ー1参照)。

 

表8ー1 ECRの4本柱

New product Introduction                 新製品紹介 

・Improve success rate                   成功する確率の改善

・Reduce time to market                  市場までの時間の短縮

・Improve return on investment           投資回収の向上

・Improve quality、 reduce costs         品質改善、コスト削減

・Trade and consumer promotions          取引および消費者プロモーション 

・Improve consumer targeting             成功する確率の改善

・Improve return on Investment           投資回収の向上

・Co-operation across the supply chain                                    サプライチェーンを通じた共同作業

・Range and assortment                   範囲と分類 

・Match to consumer and shopper needs                                         消費者および店舗のニーズに合わせる

・Reduce duplication                     重複の削減

・Improve return on space                スペース回収の向上

・Products replenishment                 製品補充 

・Improve on-shelf availability          陳列商品の有効性の向上

・Reduce cost                            コスト削減

・Reduce inventory                       在庫削減

ECRは効率の改善によってサプライヤーと小売業者双方に多くの潜在的利益を導いたが、ECRがもたらしたもっとも大きな変化は、本物のサプライチェーンを可能にしたことだろう。情報の共有によってサプライチェーンは需要チェーンにもなり得るし、より高い顧客価値を創り出すことができる。

何十年も、特に小売業界では、バイヤーとサプライヤーはパートナーというよりむしろ敵対者として活動してきた。商流自体が拡大すればチェーン内でも個人はこれまで通り優位性を追求できるのだが、それにもかかわらず、「ケーキをふくらませる」ための協力はできるが、その分配方法の決定で争うという枠組みは今も存在している。

共同生産とロジスティクス・パートナーシップ

これまで見てきた例から、サプライチェーンの効率性を下げる主な理由は、チェーンにおけるさまざまな主体間のコーディネーションと結びつきの欠如であることは明らかだ。「誰も孤島であってはいけない。」このフレーズはサプライチェーンにとって重要な意味を持っている。実際多くの企業では、パートナーシップと共同作業により狭量な利己主義や衝突よりもずっと大きな成功を収めるという認識が広がりつつある。

以下のトヨタにおけるケーススタディーを見てほしい。

トヨタ:パートナーシップのパワー

1997年2月3日月曜日、日本最大の自動車製造会社であるトヨタは、関連サプライヤーのひとつであるアイシン精機構内で起こった全焼火災の結果、日本における組立てラインすべてを停止すると発表した。アイシン精機は何種かのトヨタモデルにブレーキマスターシリンダーを供給しており、唯一のブレーキ液調整バルブのサプライヤーであった。この火災は、少数の関連サプライヤーからジャストインタイムによって届けられる部品を使って最低レベルのストックで運営される、トヨタの有名な委託製造システムにおける弱点のひとつをはっきりと見せつけた。火災の結果、トヨタの手元には半日分の必須部品ストックしか残らなかった。自動車メーカーの生産ラインはほどなくきしみながら停止し、他のトヨタのサプライヤーもこれに続いた。トヨタ系列すべての生産をシャットダウンさせた大惨事はこれが初めてではない。1995年阪神大震災の折に神戸近辺の部品製造へのサプライチェーンが分断され、同じような問題に苦しめられた。

トヨタのライバル社であるホンダは、長いことデュアルソーシング(二重部品調達)のポリシーを持っている。理由の一部は緊密なサプライヤーのネットワークを持たないことにあるが、キーサプライヤーの損失を防ぐ防御手段としての理由もある。ホンダは、サプライヤー間である程度の競争によるライバル意識を存続させることに優位性があると主張し、それが品質およびコスト改良を推し進めると信じている。

トヨタ創立者である豊田章一郎は、自社ブランドのJITが「まだ完璧ではない」ことを受け入れた最初の一人であったが、しかし長期的に見た場合やはりこのシステムが最良の有効的解決策であるという確信は動かなかった。このシステムは、サプライヤーたちの「規模の経済」を通じてコスト削減をはかり、関連企業間での献身的な精神を生む。トヨタは部品メーカーに対し、特定車種のための部品をまだ構想段階にあるうちにそれぞれで開発するよう要求する。あるサプライヤーに部品開発を任せた場合、言うまでもないが、同じサプライヤーに製造作業を依頼しないことはない。ただ、アイシン精機火災のように不幸な事件が起こった場合、おそらく企業はほかの供給源に向かうであろう。このケースでは、20前後のトヨタの関連サプライヤーが呼び集められ、不足した部品を供給するために即座に設備を整え、従業員を配置し、同等作業のための新しい生産ラインを立ち上げた。報告によると、トヨタ社は2月7日金曜日までに全工場において組立ラインを再始動させ、アウトプットを通常レベルの90%まで回復させることに成功した。フル生産は次の月曜日に再開された。

協力の重要性をうまく説明するのが、しばしば引き合いに出される「囚人のジレンマ」の例である。自分とパートナーが銀行強盗の容疑で逮捕されたと仮定する。二人は別々の監房に入れられ、互いに連絡をとることは許されない。刑事は、自白すれば減刑するとそれぞれに話すが、自白しなければ罰せられることもない。

実際、刑罰は次のように課せられる。

選択1 自分は自白して、パートナーはしない

結果  自分は共犯者として禁固1年だが、パートナーは禁固5年

選択2 自分はせずに、パートナーが自白する

結果  自分は禁固5年だが、パートナーは共犯者として1年のみ

選択3 二人とも自白する

結果  二人とも禁固2年

選択4 二人とも自白しない

結果  二人とも釈放

これらの選択肢と結果は図8-9のマトリックスに要約できる。

もっとも有望な結果は? もし自分とパートナーが互いを心から信頼していない場合、とりわけ以前の経験によって相手が油断ならないと思っていれば、ふたりとも自白するであろう。明らかに最良の戦略は信頼関係に基づいてふたりとも自白しないことである。

図8-9 囚人のジレンマ:刑罰の選択肢(禁固の年数)

Partner            パートナー

You                あなた

Confess            自白する  

Don’t confess      自白しない

この単純な例は現実世界とのよい類似性を提供している。購買に関する一般通念として、ひとつのアイテムに対して多様な供給源が望まれるという見地に向かう傾向がある。このような状況では単一の供給源に過剰に依存しないことが主張されている。さらにはひとつのサプライヤーを他と対抗させて購買コストを減らすことができる。しかし、いずれにしろこのような関係は敵対関係となりがちで、実際、最善ではない。

互いの関係が値段交渉のみに基づいている場合、最初におろそかにされるもののひとつは品質である。サプライヤーはコストを最小に押さえるためにもっとも基本的な仕様のみを供給しようとする。このような状況でバイヤーは、入庫品の点検とやり直しのための追加コストを背負い込むことになる。サプライヤーが顧客オーダーを特に優先しなかった場合、サービス関連の質もおろそかになる。

もっと具体的なレベルでは、JITデリバリーのための必然的結果としてJIT製造に移行したカスタマーは、複数のサプライヤーからの入庫管理はまったく現実的でないことに気づいた。同様に、オーダーや補充指示のためのコミュニケーションも複数のサプライヤーとの間ではずっと難しくなる。

バイヤーとサプライヤーとの関係が近いほど、双方の専門的技術を相互利益のために発揮しやすい。例えば、多くの企業がサプライヤーとの密接な協力によって、製品デザインや付加価値をもつ部品の改良が可能になることに気づき、また一般的には共同作業のより効果的な方法も見つけ出す。

 これが「共同生産」のコンセプトの誕生を強調する理論である。共同生産は次のよ

うに定義できるであろう:

 相互信頼に基づく限定された数のサプライヤーとの長期的な関係による開発

共同生産関係におけるメリットの典型例は:

・納品のリードタイムの短縮化

・信頼度の高い出荷契約

・スケジュール崩壊の減少

・少量在庫の実現

・デザイン変更の敏速な実施 

・品質問題の減少

・安定した競争価格

・より優先度の高いオーダー

共同生産の基本哲学においてサプライヤーは、連続性をもった顧客のための工場の延長であり、また「継ぎ目のない」一貫したパイプラインとして重視されなければならない。アウトソーシングの傾向が続いているが共同生産への動きもかくあらねばならない。英国における日産はこのコンセプトの主要提唱者のひとりである。彼らのアプローチのかぎとなる要素は「サプライヤー開発チーム」の利用である。これは日産が課した要求達成のためにサプライヤーを補助する、日産のスペシャリストたちによる小グループである。サプライヤー開発チームの全体的な目的は、双方のコスト削減と能率上昇、つまり「ウィン-ウィン」の結果である。一台の自動車あたりの材料コストは85%にも上るので、購入コストを削減できるならどんなことでもトータルコストに著しい効果を与え得る。

図8-10は自動車メーカーの購入材料がトータルコストの85%を占める、典型的ともいえる状況を示している。更には、部品サプライヤーの材料コストが製造業の平均である40%近いことを示している。残りの60%(サプライヤーバリュー上乗せ)の内、80%はおそらく間接費用が占め、通常その30%くらいはサプライヤーのロジスティクス・コストであろう(すなわち、インベントリー、セットアップコスト、輸送料、倉庫料など)。

これが意味するのは、自動車メーカーにかかる材料費のおよそ12%をサプライヤーのロジスティクス・コストが占めているということである(85%x60%x80%x30%)。もしもサプライヤーのロジスティクス・コストの割合が自動車メーカーとサプライヤー間のインテグレーションおよびパートナーシップの欠如にあると気づけば、コスト削減のための大きな源泉の存在が明らかになるであろう。

 図8-10 サプライヤーのロジスティクス・コストが自動車コストに与える影響

   Vehicle manufacturer        車両メーカー

   Component suppliers         部品サプライヤー

   Material costs              材料コスト

   Value added                 価値上乗せ

   Supplier value added        サプライヤー価値上乗せ

   Overheads & Indirects       間接費用

   Logistics costs             ロジスティクス・コスト

 伝統的な敵対関係において車両メーカーが材料コストを減らそうとした場合、部品サプライヤーのマージンを絞ろうとするであろう。共同生産アプローチはまったく異なる-車両メーカーは、サプライヤーの利益ではなくコストの削減を求めるのである。共同作業と緊密に統合されたロジスティクス作成メカニズムを通じて、二つの組織は双方にとって利益のある状況を達成しようとする。英国日産のような企業は、これが理想郷の夢でなく現実に実施できることを証明した。

共同生産の原理はサプライチェーンの両方向に拡張することができる。上流はサプライヤーに、下流へは流通業者、小売店、エンドユーザーまでも。共同生産の成功によって得られる対価に潜在的に含まれているのは、より良いスケジュール統合の結果による在庫の縮小とセットアップ・コストの削減を通じたすべての関係者へのコスト削減である。競争戦略に対して意味するものは深い。新しい競争パラダイムは、サプライチェーンの競争相手はサプライチェーンであり、どんな企業もその成功は、自分のサプライチェーン関係をいかにうまく管理したかによるというものである。

表8-2はサプライヤー関係における従来型アプローチと共同生産コンセプトの違いを要約している。

図8-2 従来型購買と共同生産との比較

購買ダイナミックス          従来型購買                             共同生産

サプライヤー/バイヤー関係  敵対                             パートナー 

関係保有期間                不順                             長期 

契約保有期間                短い                             長い

オーダー量                  大                             小

輸送方法                    単一アイテムによるトラック一車建 JITデリバリー

品質保証                    点検に次ぐ点検                             到着点検なし

サプライヤーに対する        パーチェスオーダー                           口頭

 コミュニケーション手段

コミュニケーション頻度      散発的                             継続的

インベントリーインパクト    資産                             責任 

サプライヤー数              多・多ければ多いほど良い                     少数、あるいは単一

デザインプロセス            製品デザイン後、見積りをとる サプライヤーのアイディアを確認後製品をデザインする

生産量                     大ロット                             小ロット

出荷スケジュール            毎月                             毎週もしくは毎日

サプライヤーロケーション    広く分散                             できるだけまとめる

倉庫                        大・オートメーション化                       小・柔軟

出典:ギウニペロー L.C.「購買ガイド、全米パーチェーシングマネジメント協会」1986.USAを改作

サプライヤー開発

「サプライヤー開発チーム」というアイディアについては先に言及した。このチームの目的は、サプライヤーとともに2つの組織が相互利益を作り出せる関係のあり方を追求することである。サプライヤー開発へ向けての革新的アプローチには、コスト削減の見地からのみならずマーケティングにおいても多くの利点がある。例えば多くの企業は、ますます価値を高めているイノベーションの源泉が、製品イノベーションにおいてもプロセス・イノベーションにおいても、サプライヤーであることに気付き始めている。これらの企業は、製品開発プロセスの早期段階からサプライヤーを参加させることで新たな見方が導入され、しばしばイノベーション解決につながることに気づいたのだ。ある自動車メーカーはカーペットメーカーと緊密に仕事をしていたが、そのおかげでサプライヤーは残りの車にも、重くて費用のかさむ防音材をカットした改良した仕様書を提案することができた。

サプライヤー開発は、ベンダーのシステム手順をいかに改良し、顧客の手順とより密接に統合できるかという分析にまで拡張されねばならない。サプライチェーン機能における能率性と有効性による競争優位はますます高まっており、すべてのレベルでサプライヤーと顧客との協力が大きければ大きいほど、優位を得られる公算もより大きくなるという事実を覚えておいてほしい。

 サプライヤーの選択の際、それにサプライヤー削減の基準を求める際にも、組織は共同生産のコンセプトを受容できるベンダーを探す必要がある。典型的には、今日の洗練されたバイヤーは、サプライヤーが定められた品質基準を常に満たせることの保証を求めている。このような場合普通サプライヤーは、国際標準化機構(ISO)や英国標準規格協会(BSI)といった妥当な規格団体を通じて保証書を得ることになる。顧客はもはや入庫時の品質検査をせず、おそらく何らかの形のジャストインタイムによる在庫管理を行うことから、サプライヤーによる総合的な品質保証の必要性は避けられない。

繰り返すが、わたしたちは通常、サプライヤーを慎重に定められた基準に基づいて評価を行う企業をいくつも知っている。これはしばしばベンダー評価として知られているシステムである。理想としては、ベンダーの実績測定は双方のマネジメントで一定のフィードバックを行って改良点を認識し実行させる機会を促す継続的なプロセスでなければならない。ベンダー評価案の一例をこの章の付録に提示してある。

多くの一流メーカーは今、自社のサプライヤーたちに「サプライヤー・アソシエーション」の形式に集結するよう奨励している。このアソシエーションの目的は、最高の働きを分かち合い、サプライチェーンにおけるプロセス統合を高める更なる方法を決定することである。

対決ではなく、サプライチェーンにおける協力こそが、航空宇宙産業であれ食料小売業であれ産業界で好成績を上げるビジネスモデルなのである。サプライチェーンの統合によってもたらされる明白な財政上の利益には多くの印象深い証拠が存在する。実際、幾ばくかの根拠を持って断言できる。「サプライチェーンが競うのだ。企業が競うのではない。」

 

付録:ベンダー評価システムの例

1 パートナーシップ発展に対するサプライヤーの関心度評価

  1 関係発展にほとんど関心を示さない。製品コスト情報を公開しない。

  5 関係改善に何らかの努力が見られる。共同開発情報を常にこちらに知らせている。

 10 長期関係を重んじる。役員の関心が顕著。長期プラン分担の用意あり。「オープンブック」プライス。

2 サプライヤーのデリバリー実績評価

  指定納入日に対するオンタイムデリバリーの割合:

        1  2  3  4  5  6  7  8  9  10

  オンタイム 75% 80%  85%  90%  95%  96%  97%  98%  99%  100% 以下

3 市場に対するサプライヤーの価格設定評価

  1 常に市場相場を上回る  

  5 市場相場

 10 市場相場を下回る。「決して故意の安売ではない」

4 サプライヤーによるコスト削減のイニシアチブ評価

  1 コスト削減アイディア提出はわずかで効果に乏しい。市場相場を下げることをためらう。

  5 数々の提案を出し、わたしたちは年間コストを恒常的に2-3%節減することに成功している。

 10 コスト削減のために一貫したプランを作成。調査協力や代案試行に積極的。市場価格値下げ進展に積極的。プログラムは年間5%のコスト削減を達成。         

5 業界の標準に対するリードタイムの比較

  1 長いリードタイム。サプライヤーの自己満足。危機対処に柔軟性欠ける。

  5 平均的リードタイム。サプライヤーに現実的な改良プランがない。危機には手を差し伸べる。

 10 一貫して競争相手よりも短い。リードタイム短縮に向け常に努力する。危機的要求に喜んで応じる。

6 サプライヤーの無欠陥品納入評価

  1 いくつかの不適合品がある。経常的欠陥がまだ存在している。

  5 個別の不適合品はあるが、その過失がより多くのロスにつながる可能性は低い。システム上の過失である証拠は無い。 

 10 不適合品無し。

7 サプライヤーの苦情防止能力評価

  1 5かそれ以上の苦情。継続的な過失が「オンライン」にある。

  5 2以下の苦情で即座に処理される。孤立した「オンライン」の難事。

 10 苦情無し。材料トラブル無しの「オンライン」 

8 サプライヤーの品質問題への反応評価

  1 サプライヤーはほとんど、あるいはまったく協力しない。原因でなく症状に取り組む。

  5 サプライヤーは調査を請け負うが、反応性および「欠陥ゼロ」企業の意識に欠ける。

 10 即座の徹底した調査。矯正活動実施。適切な補償の提供。

9 サプライヤーの適合/分析証明書評価

  1 証明書に重大な脱落。 証明書がしばしば遅れる。追加料金が課される。

  5 証明書は概して許容内もしくは不要。時に追跡を要する。追加料金無し。

 10 証明書はたいへん包括的で常に時間どおり。追加料金無し。

10 配送書類の質評価

  1 必須の情報をもらす。貧弱な体裁。

  5 アイテムコード、オーダーナンバーといった基本的情報をすべて保有。

 10 ロットナンバー、ロット重量などの包括的情報を保有。

11 パレット運搬/荷姿の許容評価

  1 破損したパレットあり。不完全に積み重ねがち。裏返しのラベルあり。マルチロットデリバリー。

  5 適切な荷姿。たまに運送クレームあり。許容内のロットサイズ。運送クレーム無し。

 10 優れたパレット。うまく積みつけられた商品。清潔で入念に積み上げられ、安定している。

12 代表者の質評価

  1 不適切な頻度のコンタクト。サプライマーケットの知識が乏しい。質問への反応が遅い。自分の企業のアプローチに影響を与えることができない。わたしたちのその時のビジネスニーズを理解しない。

  5 基本的にすべての局面において信頼できるが、わたしたちにより多くの資金を割り当てることでより良い結果を成し得る。

 10 常時申し分無く準備している。たいへん積極的なアプローチ。必要時に現れる。返答が早い。質が高く信頼性のあるマーケット情報。企業内変化を生み出すことができる。高度の専門家。

13 サプライヤーのローカルコールオフ協力評価

  1 サプライヤーはスキームをサポートしない。多くの疑問とオペレーション上の問題が存在する。

  5 ファクトリー関係を築くにあたり努力が見られる。疑問の早期解明。

 10 優秀なサポートサプライヤーがファクトリーとのよい関係を築く。コールオフワーク作成への真なる欲求。相互利益のためのよい情報交換。

14  サプライヤーの経営システムの効率評価

  1 価格に疑問多し。リベートおよびクレジットが常に遅れる。

  5 価格への疑問を最小化するための真なる努力。クレジットおよびリベートは指示どおり。

 10 ほとんど価格に疑問は無い。クレジットおよびリベートは迅速に処理される。

15 サプライヤーのセールスオフィスの効率評価

  1 支払期日に関する情報を決して自発的に提供しない。オーダー状況を意識していない様子。オーダー提出に遅れもしくは難点あり。履行できないオーダーをも受理しがち。

  5 慣例的に進展情報を渡す。時折に催促を要する。オーダー詳細はすばやくチェックされ必要な行動がとられる。

 10 すばやく正確なオーダー進展情報を伝達。各オーダー状況を常に把握。オーダー詳細を全うするかもしくは即刻代案に合意する。

16 サプライヤーの納品ブッキング手続き評価

  1 まったくしない。ドライバーはいつ現れるかわからない。

  5 商品はブッキングされるが、時間は時折ドライバーに無視される。

 10 常にデリバリーに良い時間をブッキング。  

17 サプライヤーの新アイディア提案実績評価

  1 他の顧客が優先される。革新的アイディアはほとんどない。

  5 いくつかの進展案が持ちこまれた。サプライヤーはおおむね自己利益のために働いている。

 10 多くの進展案が具体化。進んで研究プロジェクトと密接に働く。

18 サプライヤーの技術的問題の解決へのアシスト評価

  1 問題解決能力に乏しい。ほとんど興味を示さない。

  5 アシストされたが、問題解決への資金投入にはあまり乗り気でなかった。

 10 すばやく反応し、正しいレベルの専門知識を提供した。 

19 サプライヤーの開発スケジュールへの忠誠評価

  1 絶望的な反応。サンプル、トゥーリング、アウトターンなどしばしば時間どおりでない。非柔軟的態度を示す。

  5 しばしば不履行が見られがち。変更への反応は困難の見込み。

 10 プログラムは決められたスケジュールへ向けて精力的に維持される。変更への反応も好意的。

20 最新技術に関する代表者の能力評価

  1 代表者に技術知識がほとんどない。

  5 技術知識は平均並だが、必要時にはすぐスペシャリストを呼び出せる。

 10 優秀な技術知識を持ちながらも、必要時にはスペシャリストたちの応援を得られる。