荷主が発注する業務は元請けと呼ばれる大手企業が受注し、実際の運送業務は下請けの中小事業者が担うという、ピラミッド型の多重下請け構造が広がっている。下請関係が重層化し、介在する事業者の数が多くなるほど荷主が支払う運賃から手数料が次々に減額されていく。その結果、実際に貨物を運送する事業者の受取運賃は大幅な低下を余儀なくされるという構造的な問題が存在する。
また、書面によらない口頭での業務の請負が行われることが少なくない。このような場合、業務を受注にあたって詳細な内容、条件等にまでは踏み込まずに請け負うことになる。その結果として、長時間にわたる荷待ち時間の発生に加え、附帯作業を荷主から要請される等、当初取り決めた運賃料金に見合わない作業やリスクを負わされ、不測の損害を被りかねないことが指摘されている。
荷待ち時間など待機時間が運送契約において必ずしも明確に位置づけられていないため、トラック運送事業者がこれらに係る料金を荷主に対して請求できない場合が少なくない。なお、附帯作業は口頭依頼が32.3%、事前連絡なしが9.5%と4割を超える割合で書面化されていない。
この附帯作業の未請求問題は当然企業収益に直結し、トラックドライバーの賃金水準にも影響を与えることになる。
国土交通省は2008年「トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン」を策定して、待機時間を請求できないことや、口頭依頼等による契約形態がトラック運送企業の収益性の低さにつながっているとして、官民、労使を挙げて荷主との取引適正化、その結果としての収益性向上を図っている。