紛争の現状
開戦23日目、紛争は「軍事的優位」を主張する米国と「停戦拒否」を貫くイランという構図のまま、第4週目に突入した。
米国防総省の発表によれば、イランのミサイルとドローンによる攻撃は開戦当初から90%減少した。トランプ大統領は3月21日にTruth Socialで「われわれの目標達成に非常に近づいており、中東における軍事努力の縮小を検討している」と投稿し、イランの海軍・空軍・防空システム・対空兵器・核施設を破壊したと主張した。一方、官僚筋によると2,200〜2,500名の追加海兵隊員が中東に派遣されており、「縮小」の発言との矛盾が浮かびあがっている。 CTOL Digital Solutions
トランプ大統領は3月21日、ホワイトハウスで記者団に「停戦はしたくない。文字通り相手を壊滅させているときに停戦はしない。すべてを叩き潰した」と停戦を明確に拒否した。NATO同盟国を「臆病者」と呼び、ホルムズ海峡の安全確保を他国に求めたが、現時点でいずれの国も軍艦派遣を約束していない。 FreightWaves
これに対しイランのアラグチ外相は3月21日(イラン暦新年ノウルーズ当日)に「われわれは完全にこの戦争を終わらせることができるいかなる提案も歓迎する。現時点では、一部の国々が解決策を探ろうとしているが、米国は侵略をやめる準備ができていないようだ。そのためわれわれは自衛を続ける」と述べ、停戦は拒否しつつも完全な解決への扉をわずかに開く姿勢を見せた。 The National
3月21日(ノウルーズ初日)、米国はナタンツ核濃縮施設をバンカーバスター爆弾で攻撃した。イランは放射性物質の漏洩はないと発表しているが、IAEAは「核事故リスクを避けるための軍事的自制」を求める声明を発表し、ロシアは「国際法の明白な違反」と強く非難した。またイランはインド洋英領チャゴス諸島のディエゴガルシア米英基地に向けて中距離弾道ミサイル2発を発射したが、いずれも失敗に終わった。 FreightWaves
ホルムズ海峡については、UKMTOが「湾岸・ホルムズ海峡・オマーン湾にわたる脅威レベルは依然として最高水準(クリティカル)」と発表しており、3月1日以降に21件の商業船舶・沖合インフラへの攻撃が確認されている。またUAE・クウェート・サウジアラビア・バーレーンへの攻撃が継続中で、イランがラス・アル・ハイマ港に「壊滅的打撃を与える」と警告した。 Freightos
エネルギー面では、ブレント原油が3月21日に112.19ドルと開戦来最高値を更新した。トランプ政権はエネルギー危機への対応策として、イラン産石油140万バレル分の制裁を4月19日まで一時解除する異例の措置を発動した。ユナイテッド航空CEOのスコット・カービー氏は「原油は2027年末まで100ドル超が続き、最大175ドルに急騰する可能性がある」と社内向けに表明しており、ジェット燃料コストが年間110億ドル増加する可能性があるとして一部路線の削減を検討している。 CNBC
国際コンテナ運賃の動向
「割増金の波」が全航路に発効する局面
Freightosの3月17日付週次レポートは「コンテナ市場は今まさにイラン戦争による割増金の波を受け止めようとしている」と警告した。湾岸向けの直接的打撃にとどまらず、先週半ばから主要船社がアジア〜欧州・大西洋横断を含む広範な航路に1コンテナあたり数千ドルの緊急割増金・PSS・GRIを相次いで発表した。船社は原油価格上昇だけでなく燃料調達アクセスの混乱にも直面しており、ホルムズ閉鎖の直接影響を受けない航路でも値上げを求める要因となっている。 euronews
SCFI・主要運賃指数の動向
3月13日付SCFIは1,710.35を記録し、開戦前の2月27日比28.3%上昇、中東航路は40.8%急騰し3,220ドル/TEUに達した。その後も原油が100〜112ドル台で高止まりしており、マースクが3月25日付・CMA CGMが3月23日付でそれぞれ全長距離航路への緊急燃料割増金を導入予定となっており、次週以降さらなる運賃上昇が見込まれる。 The Washington Post
湾岸向けの代替ルート模索
開戦当初に全面停止したCMA CGMやマースクを含む船社が、オマーン・UAE・サウジアラビアのアクセス可能な代替港への迂回受け入れを再開し陸上ランドブリッジで対応している。ただしUAEのフジャイラ港がイランの直接攻撃を受けるなど代替港にも新たなリスクが生じており、コロンボ港は既存混雑を理由に湾岸向け貨物の受け入れを拒否している。 euronews
FTIコンサルティングは「紛争前から海運市場には過剰キャパシティ・軟調なトラック需要・高金利という脆弱性があった。そこに紛争がコスト側に既にひっ迫していた市場に需要側のプレッシャーを注入した形であり、この混乱が短期的なものか構造的なリセットの始まりかにかかわらず、即座の戦術的対応と長期的な戦略的再配置が求められる」と分析した。 OPB
国際航空貨物運賃の動向
南アジア〜欧州で開戦来最大70%の急騰が継続
今週もイランの地域空港への攻撃が継続しており航空貨物の混乱は続いている。カタールの空域は依然として閉鎖中でカタール航空の中東運航も停止が続いているが、UAEは段階的にフライトスケジュールを回復しつつある。ただしドバイ国際空港は今週も複数回の攻撃を受け、そのたびに数時間の閉鎖を余儀なくされた。 euronews
グローバルの航空貨物キャパシティは前週比18〜21%減少しており、アジア〜中東・南アジア〜欧州回廊では約40%のキャパシティが消失した状態が続いている。フォワーダー各社が直行チャーター便を手配しているが、偶数週の中国輸出本格回復とともにバックログが急速に積み上がっており、運賃のさらなる上昇圧力となっている。 NBC News
ユナイテッド航空は2027年末まで原油100ドル超が続くとの想定のもと、一部路線の削減とテルアビブ・ドバイ路線の運休継続を発表した。ジェット燃料価格は2026年2月末比でほぼ倍増しており、この構造的コスト増が航空貨物運賃の高止まりを長期化させる最大の要因となっている。 CNBC
総括
開戦22日目の現在、トランプ大統領が「軍事的縮小の検討」を示唆する一方で停戦を明確に拒否し、追加海兵隊派遣とナタンツへの核施設攻撃という強硬姿勢を同時に展開するという矛盾した状況が続いている。イランのアラグチ外相は「完全な終戦なら歓迎」という表現で外交的余地をわずかに示したが、双方の条件のギャップは依然大きい。コンテナ運賃はSCFI開戦前比28%高・中東航路41%急騰という水準を維持しながら、今週から全航路への燃料割増金が本格発効する段階に入った。航空貨物はジェット燃料ほぼ倍増という構造的コスト増が定着する中、ゴールドマン・サックスが「高原油価格は2027年まで継続する可能性がある」と予測しており、 CTOL Digital Solutions 運賃の高止まりが短期的な問題ではなく2026〜2027年にまたがる構造的な問題として定着しつつある。