紛争の現状
開戦21日目、紛争は依然として「停戦なき消耗戦」の様相を呈している。
イラン外相アラグチ氏は3月16日のタイム誌インタビューで「この戦争はわれわれの戦争ではない。米国が始めた。米国はイラン・地域・世界全体への人的・財政的損害の全責任を負うべきだ」と述べ、停戦交渉を全面拒否した。イランがホルムズ海峡を「窒息させようとしている」かとの問いには「自然に多くの国と船舶がこのルートを使いたくない。一部の国が安全な通過条件について接触してきており、われわれはその条件を提示している。戦争終結後のホルムズ海峡に関する新たなプロトコルを策定することが第一歩だ」と述べた。 NBC New York
一方、イランの別の高官はヒズボラ系チャンネルに「現段階では停戦のシナリオも戦争終結の選択肢もない」と語り、政府内でメッセージが割れている。軍事面では、3月13〜14日の週末だけでIDF(イスラエル国防軍)が200以上の目標を攻撃し、開戦以来の累計では31州中26州において7,600回超の爆撃・約5,000ソーティが実施された。イスラエルはイラン西部・中部の弾道ミサイル発射拠点・防空システム・IRGC司令部を重点的に破壊している。 The National
トランプ大統領はホルムズ海峡の安全確保に向け、日本・韓国・中国・フランス・英国など7カ国に軍艦派遣を要求しているが、現時点でいずれの国も約束しておらず、「NATOは非常に愚かな過ちを犯している」と同盟国への不満を示した。IEAの32カ国が来週から4億バレルを120日かけて放出する計画だが、ロイズ・リストは「海軍護衛があっても喪失した輸送量の約10%しか現実的に回復できない」と推計している。 CNBC
フーシー派については、2025年10月以降、紅海での商業船舶への攻撃をゼロに抑え、政治的連帯声明にとどめている。指導部がイスラエルの2025年空爆で弱体化していることと、現在進行中のイエメン内戦における対サウジ和平交渉を優先していることが抑制要因となっている。 Lloyd’s List
国際コンテナ運賃の動向
「割増金の波」が全航路に押し寄せる局面が本格化
Freightosの3月17日付週報は「コンテナ市場は今まさにイラン戦争による割増金の波を受け止めようとしている。湾岸向け貨物への直接的打撃にとどまらず、主要船社がアジア〜欧州・大西洋横断航路を含む広範な航路に1コンテナあたり数千ドルに及ぶ緊急割増金・PSS・GRIを相次いで発表した。船社は原油価格上昇だけでなく燃料調達アクセスの混乱にも直面しており、ホルムズ閉鎖の直接影響を受けない航路でも運賃値上げを求める要因となっている」と警告した。 Fox News
湾岸向けの代替ルート模索と新たな混雑
開戦当初に全面停止したCMA CGMやマースクを含む船社が、オマーン・UAE・サウジアラビアのアクセス可能な代替港への迂回受け入れを再開し、陸上ランドブリッジ接続で対応している。船社はインドの港を中継拠点として活用し、中東の代替港へのシャトルサービスを新設している。ただしUAEのフジャイラ港がイランの直接攻撃を受けるなど代替港にも新たなリスクが生じており、コロンボ港は既存の混雑を理由に湾岸向け貨物の受け入れを拒否している。 The Times of Israel
SCFIとグローバル運賃水準
3月13日付のSCFIは1,710.35を記録し前週比14.9%急騰、開戦前の2月27日比で28.3%上昇し昨年7月以来8カ月ぶりの1,700台を回復した。中東航路は週間で40.8%(933ドル)急騰し1TEUあたり3,220ドルに達した。 NBC News
戦争リスク割増金・緊急割増金・バンカー割増金が積み重なるかたちで運賃コストが押し上げられており、コンテナ船運航においては保険が「単純なコスト追加」ではなく「物理的に通過できない制約」として機能している点が過去の混乱と本質的に異なる。 Al Jazeera
国際航空貨物運賃の動向
南アジア発着で50%急騰・アジア〜欧州で構造的なキャパシティ消失
Freightos Air Indexによると、南アジア〜北米および欧州向けの航空貨物運賃は開戦以来約50%上昇し、それぞれ6.00ドル/kgおよび4.00ドル/kg前後に達した。東南アジア〜欧州は約20%上昇し4.00ドル/kgを超えた。中国〜米国向けも約20%上昇し7.00ドル/kgを超えているが、この上昇分は春節明けの需要回復が主因だ。また、IATA統計では2026年1月の航空貨物キャパシティが過去最高の月次記録を樹立しており、その好調な出発点がイラン紛争によって大きく損なわれた格好となっている。 euronews
主要キャリアの適応と残存するリスク
カタール空域は依然として閉鎖中でカタール航空の中東運航も停止が続いているが、UAEは段階的にフライトスケジュールを回復しつつある。ただしドバイ国際空港は今週も複数回の攻撃を受け、そのたびに数時間の閉鎖を余儀なくされた。エミレーツスカイカーゴも断続的な停止と再開を繰り返している。 Fox News
コンサルタント会社Aeveanのマルコ・ブルーメン マネージング・ディレクターはIATA世界航空貨物シンポジウムで「航空会社は中国・香港〜欧州間の直行キャパシティを開戦直前比で26%増加させ、湾岸以外の経由地を使う中継便も14%増加させた」と述べ、業界の適応が進んでいることを示した。しかしこれらの調整には限界があり、欧州・米国向け貨物のバックログは依然としてアジア各地で積み上がっている。 euronews
総括
開戦21日目の現在、イランが「戦争終結後のホルムズ新プロトコル」という外交的出口を初めて言語化した一方、高官が「停戦シナリオなし」と発言するなど政府内でメッセージが割れている。コンテナ運賃は「湾岸向けの直撃」から「全航路への割増金波及」という第二段階に入り、航空貨物は南アジア発着50%急騰というダメージが定着する中でキャリアが適応を進めている。原油価格が戦前の65ドルから100ドル超へ40%超急騰し、ポンプ価格を通じて米国・欧州・アフリカの一般消費者に影響が及んでいる現実が、紛争の終結を求める国際的な圧力を高める最大の要因となっている。 CNBC