紛争の現状

開戦20日目を迎えた現在、イランとの戦争は少なくとも12カ国に拡大し、地域全体で2,300人超の死者が確認されている。イスラエルのレバノンへの地上侵攻が拡大し、ヒズボラが2024年以来初のミサイル・ドローン攻撃を再開するなど、紛争は多正面化が続いている。 The National

外交面では、アラグチ外相がイラン暦年末最後の記者会見で「われわれは停戦を求めていない。しかしこの戦争は、敵が二度とこのような攻撃を考えないような形で終結させなければならない」と表明した。停戦を求めないが戦争は終わらせるという一見矛盾した立場は、完全な軍事的勝利ではなく外交的解決への余地を残すものとして受け止められている。 CNBC

トランプ大統領は「イランは取引を望んでいるが、条件がまだ十分でない」として交渉継続の意向を示しつつ、ホルムズ海峡の安全確保に向けて日本・韓国・中国・フランス・英国など7カ国と協議中だと明かした。しかし現時点でいかなる国も艦船派遣を約束しておらず、オーストラリアは海峡への軍艦派遣を明確に拒否した。 FreightWaves

ホルムズ海峡については、イランが通航船舶への攻撃を継続する中、今週に入ってその対象をペルシャ湾・オマーン湾内の非通航船舶や周辺の複数港にまで拡大した。一方でイランは中国・パキスタン・インドなど一部の国の船舶には通航を許可しており、選択的な検証プロセスが存在することが示唆されている。 NBC News


国際コンテナ運賃の動向

「割増金の波」が全航路に押し寄せる局面へ

Freightosの3月17日付最新週報は「コンテナ市場は今まさにイラン戦争による割増金の波を受け止めようとしている」と警告した。湾岸向け貨物への直接的打撃にとどまらず、先週半ばから主要船社がアジア〜欧州・大西洋横断航路を含む広範な航路に、1コンテナあたり数千ドルに及ぶ緊急割増金・PSSおよびGRIを相次いで発表した。船社は原油価格上昇だけでなく、燃料の調達アクセスの混乱にも直面しており、これがホルムズ閉鎖の直接影響を受けない航路でも運賃値上げを求める要因となっている。 NBC News

これらの燃料割増金やその他の運賃値上げが実際に発効するのはあと数日後であり、現時点でコンテナ運賃の上昇はまだ顕著ではなく、春節明けの需要回復を反映しているにとどまる。トランスパシフィックは先週、米西岸向けが1%上昇し約2,000ドル/FEU、米東岸向けが9%上昇し約3,000ドル/FEUとなり、今週もほぼ横ばいが続いている。 euronews

代替ルートの模索と新たな混雑

湾岸向け貨物への直接的な運航混乱は続いているが、当初全面停止していたCMA CGMやマースクを含む船社が、オマーン・UAE・サウジアラビアのアクセス可能な代替港への迂回受け入れを再開し、陸上輸送でのランドブリッジ接続で対応している。また船社はインドの港を中継拠点として活用し、中東のアクセス可能港へのシャトルサービスを新設している。ただしUAEのフジャイラ港がイランの直接攻撃を受けるなど、代替港にも新たなリスクが生じており、コロンボ港は既存の混雑を理由に湾岸向け貨物の受け入れを拒否している。 NBC News

Vespucci MaritimeのラースイェンセンCEOはTPM26(トランス・パシフィック・マリタイム会議)で「ホルムズが事実上閉鎖されており湾岸の輸出入業者に深刻な打撃を与えている。加えてこれが紅海のリスクプロファイルを劇的に高め、フーシー派がイランとの連帯からホルムズ制御が米国によって弱められた場合に攻撃を再開する可能性がある。緊急割増金の3,000ドル/FEUは始まりにすぎない」と述べた。 The Jerusalem Post

ホルムズ護衛計画の限界

ロイズ・リストは「海軍護衛があっても、喪失した輸送量の約10%しか現実的に回復できない」と推計しており、これは紅海危機後のバブ・エル・マンデブでの限定的な回復と同様の状況だと指摘した。また、コンテナ輸送の観点からは、仮にトランプ大統領の護衛計画が実現したとしても、その資源はまず石油・LNGタンカーに優先配備されるため、コンテナ船への恩恵は限定的になるとの見方が支配的だ。 CNBC


国際航空貨物運賃の動向

南アジア発着で50%急騰・全市場への波及が継続

Freightos Air Indexのデータによると、南アジア〜北米および欧州向けの航空貨物運賃は開戦以来約50%上昇し、それぞれ6.00ドル/kgおよび4.00ドル/kg前後に達した。東南アジア〜欧州は約20%上昇し4.00ドル/kgを超えた。一方、中国〜米国向けは約20%上昇し7.00ドル/kgを超えているが、この上昇分は春節明けの需要回復が主因でありイラン紛争の直接影響は限定的とみられる。 Wikipedia

今週もイランによる地域空港(中東ハブ)への攻撃が継続しており、航空貨物の混乱は広範な市場で続いている。グローバルの航空貨物キャパシティは中東系キャリアの運航停止と各社の中東路線回避により18%前後の減少が続いており、アジア〜欧州回廊では依然として約40%のキャパシティが消失した状態だ。 NBC News

こうした状況の中でキューネ+ナーゲルCEOのステファン・パウル氏は、ホルムズ海上輸送の麻痺により「海上から航空へのモーダルシフト」が起きうると指摘し、中東の海上ボトルネックを迂回するための航空輸送への需要移転の可能性を明示した。ただし「全てのフローが転換可能なわけではない」とも述べており、高付加価値・時間厳守品に限定されるとの見方だ。 Wikipedia


総括

開戦20日目の本日、割増金の波がグローバル全航路に「これから」押し寄せる局面に入った。湾岸向けの直接的打撃は代替港・ランドブリッジで一部が吸収され始めているが、フジャイラ港への直接攻撃拡大・コロンボ港の受け入れ拒否など代替ルート自体の脆弱性も露呈しつつある。コンテナ運賃は数日後に各社の燃料・緊急割増金が全航路で一斉に発効することで、「静かな上昇」から「本格的な急騰局面」への移行が予測される。航空貨物は南アジア発着50%急騰という具体的な打撃が定着しており、2026年1月にIATAが記録した史上最高の1月度航空貨物キャパシティという好調な出発点が、イラン紛争によって大きく損なわれた格好となっている。 Wikipedia 停戦への出口として外相が「終わらせ方」を初めて言語化したことは一定の前進だが、双方の条件のギャップは依然大きく、運賃の高止まりがさらに続く見通しだ。