紛争の現状
開戦19日目の現在、イランとの戦争は少なくとも12カ国に拡大し、ホルムズ海峡という世界の石油・ガス輸送の大動脈が閉鎖された状態が続いており、地域全体で2,300人超の死者が確認されている。 The National
外交面では依然として矛盾するメッセージが交錯している。アラグチ外相はイラン暦年末最後の記者会見で「われわれは停戦を求めていない。しかしこの戦争は、敵が二度とこのような攻撃を考えないような形で終結させなければならない」と述べた。停戦を求めないが戦争は終わらせるべき、という一見矛盾した立場を示しており、完全な軍事的勝利ではなく外交的解決への余地を残す発言だと受け止められている。 NBC New York
軍事面では、イスラエルが「イランにはまだ数千の攻撃目標があり、毎日新たな標的が確認されている」と述べており、作戦継続の意向を明確にした。米国はイランの石油輸出の80〜90%が通過するカルグ島の軍事施設90カ所超を爆撃した。米軍は中東への追加派遣として海兵隊・水兵約5,000名と艦船を派遣する計画だ。 CNBC
トランプ大統領はホルムズ海峡の安全確保に向け7カ国と協議中と明かし「これらの国々が自国の利益を守るために来なければならない」と述べた。IEAは混乱対応として32カ国が120日間で約4億バレルを放出する計画を発表し、うち米国分が約1億7,200万バレル、日本が約8,000万バレルを担う。 NBC New York
フーシー派については、2025年10月以降、商業船舶への攻撃を停止した状態を維持しており、紅海への軍事的関与は行っていない。ただしACLEDの分析では「フーシー派はイランによるホルムズ海峡の支配が米国によって弱められた場合に攻撃を再開するイランからの承認を待っている」との報告もあり、情勢次第で紅海再封鎖リスクが浮上しうる。 Freightos
国際コンテナ運賃の動向
SCFI:開戦前比28%急騰・8カ月ぶり高値を維持
3月13日付のSCFI(上海コンテナ運賃指数)は1,710.35を記録し、前週比14.9%急騰した。開戦直前の2月27日比では28.3%の上昇で、昨年7月以来約8カ月ぶりの1,700台回復となった。中東航路は週間で40.8%急騰し1TEUあたり3,220ドルとなった。ゴールドマン・サックスは3月のブレント平均が100ドルを超えると予測しており、KBセキュリティーズはホルムズ封鎖が緩和されるまで100〜150ドルへのさらなる上昇もありうると警告した。 The Washington Post
ホルムズ封鎖の物理的規模
Energy AspectsのアミリタCEOは「米国が軍事力でホルムズを物理的に封鎖するイランの能力は排除できるが、タンカーへの散発的な一撃を防ぐことはできない。それだけで市場は極めて慎重になる。これが現実の混乱を生み出している」と分析した。ロイズ・リストは「海軍護衛があっても、喪失した輸送量の約10%しか現実的に回復できない」と推計しており、紅海危機後のバブ・エル・マンデブでの限定的な回復と同様の状況だと指摘した。 NBC News
全航路への緊急燃料割増金の波及
マースクは3月25日付で全長距離航路に緊急バンカー割増金を導入予定で、CMA CGMも3月23日付で長距離乾貨物に150ドル/TEUの緊急燃料割増金を適用する。湾岸向けの緊急割増金はCMA CGMが3,000ドル/FEU、ハパックロイドが1,500ドル/TEU(冷蔵・特殊コンテナは3,500ドル/TEU)を適用中だ。 euronews
戦争リスク保険料はホルムズ通航前の0.25%から0.5%超へと倍増した。船舶評価額1億5,000万ドルのコンテナ船では1航海あたりの保険料が37万5,000ドルから75万ドルへと跳ね上がり、このコストはシッパーへの割増金として転嫁される。米国・イスラエルと関係する船舶については現時点でいかなる価格でも保険引受不能となっている。 The Jerusalem Post
Xenetaのピーター・サンドは「少なくとも紛争が続く限り中東向けの運賃上昇を織り込むべきだ。海上輸送に代替手段はない。地政学リスクが過去のどの時期よりも高頻度かつ深刻に現れており、10の緊急計画を立てても全て無効にされるという疲弊感もある」と述べた。 NBC News
国際航空貨物運賃の動向
グローバルキャパシティ18〜21%の喪失
グローバルの航空貨物キャパシティは前週比18%減少し、そのうち13%はエミレーツ・カタール航空・エティハドといった中東系キャリアの運航停止に起因している。アジア〜中東・南アジア〜欧州回廊全体ではキャパシティが約40%消失した。カタール航空カーゴ(世界最大の非エクスプレス貨物航空会社)はドーハ閉鎖で全便を停止しており、インド〜欧州向けの医薬品・ワクチンの約80%が中東経由を利用しているため「数週間続けば薬不足が生じる」との警告も出ている。 Fox News
最新の運賃水準と今後の見通し
Xenetaの最高航空貨物責任者ニール・ファン・デ・ウウ氏は「紛争が短期間で終結し中東物流市場が迅速に回復すれば長期的な懸念は薄れる。しかし紛争が長期化すれば、中東ハブ閉鎖の直撃を受ける航空回廊でスポット運賃が短期的に2〜3倍に達する可能性がある。そして解決策を見つけるコストは最終的に貨物オーナーに転嫁される」と警告した。 Wikipedia
DHL GroupはCFO発言として「フォワーディング部門が今週中にも緊急割増金を導入する可能性がある」と述べ、航空会社各社も戦争リスク割増金と燃料割増金の引き上げを準備中だ。キューネ+ナーゲルは極東〜欧州・米国向けの直行チャーター便の手配を急いでいる。 Fox News
総括
開戦19日目、イラン外相が「停戦は求めないが戦争は終わらせる」という外交的余地を示した一方、イスラエルが「数千の目標が残っている」と作戦継続を明言するという構図が続いている。コンテナ運賃はSCFIが開戦前比28%高・中東航路41%急騰という水準を維持しており、マースク・CMA CGMによる全航路への燃料割増金導入(3月23〜25日付)によってグローバル全体への波及が本格化する局面に入った。航空貨物はキャパシティが18〜40%消失した状態が続き、IEA加盟32カ国による4億バレルの戦略備蓄放出決定は紛争の長期化シナリオへの備えを示しており、 NBC New York 運賃の高止まりがさらに長期化する見通しだ。