紛争の現状

停戦交渉をめぐり、米国とイランの間で真っ向から対立するメッセージが交錯している。トランプ大統領は3月14日のNBCとの電話インタビューで「イランは取引を望んでいる。ただし条件がまだ十分ではない」と述べ、ホルムズ海峡の安全確保に向けて日本・韓国・中国・フランス・英国など7カ国と協議中だと明かした。 The National

これに対しイラン外相アラグチ氏は3月15日のCBSテレビ「フェイス・ザ・ネーション」で「われわれは一度も停戦を求めたことも、交渉を求めたこともない。必要な限り自国を守り続ける」と真っ向から否定した。またイランの高濃縮ウラニウムの備蓄が米・イスラエルの攻撃により「瓦礫の下に埋まった」と認めつつ、「現時点では何も交渉のテーブルに乗せるつもりはない」と述べた。 Lloyd’s List

アラグチ氏はさらに「イランは米国の資産・施設・軍事基地のみを標的にしている」と述べ、ホルムズ海峡については「複数の国がイランに対し石油・ガス船舶の安全な通過を交渉するための接触を行っている」と示唆した。これはホルムズを外交的なカードとして活用しようとするイランの意図を示すものだ。 CNBC

軍事面では、イスラエル軍が3月15日に「イラン西部・中部のインフラに対して過去24時間で200以上の標的を攻撃した」と発表。ハメネイ新最高指導者については「負傷し顔面を損傷している可能性がある」(ヘグセス米国防長官)とされる一方、イラン外相は「健在で職務を遂行中」と反論している。 CTOL Digital Solutions

フーシー派については、2月28日の開戦以降、紅海への実際の攻撃再開はなく政治的連帯声明にとどめているが、Carra Globeの分析では「フーシー派は2月28日の米・イスラエルのイラン攻撃後に紅海の商業船舶への攻撃を再開した」とも記載されており、情報の確認が引き続き必要な状況だ。 Al Jazeera


国際コンテナ運賃の動向

SCFI:開戦前比28%急騰・8カ月ぶり高値

3月13日付のSCFI(上海コンテナ運賃指数)は1,710.35を記録し、前週の1,489.19から14.9%急騰した。開戦直前の2月27日比では28.3%の上昇で、昨年7月以来約8カ月ぶりの1,700台回復となった。中東航路は週間で40.8%(933ドル)急騰し、1TEUあたり3,220ドルに達した。ブレント原油は3月13日に103.14ドルと2022年7月以来の高値圏で2日連続100ドル超を維持しており、KBセキュリティーズはホルムズ封鎖が緩和されるまで100〜150ドルへのさらなる上昇もありうると警告した。 The Times of Israel

ホルムズ封鎖の物理的規模

ホルムズ海峡は最狭部で幅21マイル(約34キロ)の航行可能水路だ。IRGCが「通過を試みるいかなる船舶にも発砲する」と明言しており、航行は単に遅くなったのではなく事実上完全に停止している。150隻以上の船舶が周辺海域に錨泊中で、世界の原油消費量の約20%に相当する石油とLNGが通過できない状態となっている。 The Washington Post

全航路への緊急燃料割増金の波及

マースクは3月25日付で全長距離航路に緊急バンカー割増金を導入すると発表しており、CMA CGMも3月23日付で長距離乾貨物に150ドル/TEUの緊急燃料割増金を適用する。湾岸向けの緊急割増金はCMA CGMが3,000ドル/FEU、ハパックロイドが1,500ドル/TEU(冷蔵・特殊コンテナは3,500ドル/TEU)を適用中だ。 euronews

Xenetaのピーター・サンドCNBCに「少なくとも紛争が続く限り中東向けの運賃上昇を織り込むべきだ。海上輸送に代替手段はない。地政学リスクが過去のどの時期よりも高頻度かつ深刻に現れており、10の緊急計画を立てても全て無効にされるという疲弊感もある」と語った。 Fox News


国際航空貨物運賃の動向

南アジア〜欧州で開戦来70%急騰

開戦以来、一部航路で航空貨物運賃が最大70%急騰したとロイターが3月13日に報じた。南アジア〜欧州が最も深刻な打撃を受けており、インドからEU・アフリカ・サウジアラビア・UAEに向かう安価なジェネリック医薬品が海上輸送から航空輸送に切り替わっている。医薬品サプライチェーン専門家のプラシャント・ヤダフ氏(米外交問題評議会シニアフェロー)は「ジェネリック医薬品を海上から航空に切り替えているという話を聞いている」と述べた。 Wikipedia

各航路の具体的な運賃水準(Freightos 3月13日)

東南アジア〜欧州が開戦前比6%以上上昇し3.82ドル/kg、南アジア〜欧州が3%上昇、南アジア〜北米が5%上昇、中東〜欧州が8%上昇し1.62ドル/kg、中国〜米国が15%上昇し6.90ドル/kgとなっている。 NBC News

キャパシティ喪失と代替戦略

カタール航空カーゴ(ボーイング777貨物機29機運航、世界最大の非エクスプレス貨物航空会社)はドーハ閉鎖で全便停止中。エミレーツスカイカーゴも同様に運航停止し新規予約を全面停止した。キューネ+ナーゲルは極東〜欧州・米国向けの直行チャーター便の手配を急いでいる。ロングルートへの迂回で燃料消費が増加し積載可能重量が減少するため、同じキャパシティを維持するには機材数の増加が必要となる。 The Jerusalem Post


総括

開戦18日目の現在、アラグチ外相の強硬な停戦拒否発言とイスラエルによる西部イランへの大規模攻撃継続が示すように、即時収束のシナリオは依然として現実的でない。ただし複数の国がホルムズ通航の安全確保に向けてイランと接触しており、海峡の部分的な開放に向けた外交的な糸口がわずかに見え始めている。コンテナ運賃はSCFIが開戦前比28%高・中東航路41%急騰という具体的な数字が示す通り上昇局面が続いており、マースクとCMA CGMが全航路への緊急燃料割増金導入を発表したことで湾岸向けの直撃からグローバル全航路への波及が本格化しつつある。ING Groupのリコ・ルマン上席エコノミストは「ホルムズ海峡外に停泊する船舶のバックログが拡大するにつれて運賃の上昇圧力は続く。保険料も戦争リスク条項の発動によって急騰しており、長期化すれば世界のエネルギーと貨物市場に持続的な混乱をもたらす」と警告している。 OPB