紛争の現状
3月15日未明、米・イスラエルはイスファハン周辺へ大規模空爆を実施し少なくとも15人が死亡。イランはイスラエルへの複数の弾道ミサイル斉射で報復し、イスファハンのシャーズ市街地区・テヘラン南部・デジフール空軍基地・ハマダンへの大規模爆発が相次いで報告された。IRGCは「対米基地への第50波の作戦を実施」と宣言した。 The National
外交面では、トランプ大統領が「イランは取引を望んでいる」と停戦が近いと示唆した一方、イラン外相アラグチ氏はCBSニュースのインタビューで「われわれは一度も停戦を求めていない。交渉を求めたこともない」と真っ向から否定した。イスラエルはイラン西部への新たな大規模攻撃を予告しており、停戦の実現には依然として大きな隔たりがある。 NBC New York
軍事面では、開戦以来の攻撃ペースはピーク時(3月4日の47波)から現在の1日平均33波へと低下し、相対的な安定化が見られる。イランの弾道ミサイル発射ランチャーは160〜190基が破壊され約200基が無力化、残存稼働ランチャーは推定150基程度となっておりミサイル発射ペースは低下傾向にある。 CTOL Digital Solutions
ホルムズ海峡については、新最高指導者モジュタバー・ハメネイ師がホルムズ海峡閉鎖の継続を宣言している一方、「イランの海軍と協力する船舶は通過を許可する」と一定の条件付き通航の可能性を示唆した。3月12日までにUKMTOは開戦以来16件の商船への攻撃を記録している。 FreightWaves フーシー派については、2025年10月以降の商業船舶への攻撃停止を継続しており、政治的・感情的な連帯声明にとどめている。 Freightos
国際コンテナ運賃の動向
SCFIの急騰と全航路への波及開始
3月13日付のSCFI(上海コンテナ運賃指数)は1,710.35を記録し、前週の1,489.19から14.9%急騰した。開戦直前の2月27日の1,333.11比では28.3%の上昇で、昨年7月以来約8カ月ぶりの1,700台回復となった。中東航路は週間で40.8%急騰し1TEUあたり3,220ドルとなった。ゴールドマン・サックスは3月のブレント平均が100ドルを超えると予測しており、KBセキュリティーズは「ホルムズ封鎖が緩和されるまで原油の追加上昇は避けられず、100〜150ドルへのさらなる上昇もありうる」と警告した。 Fox News
湾岸向けから全航路への「漏出」が始まった
マースクは3月25日付で全長距離ヘッドホール航路に20フィートコンテナ200ドル・40フィートコンテナ400ドル(冷蔵コンテナはそれぞれ300・600ドル)の緊急バンカー割増金を導入すると発表し、14日ごとに見直す。CMA CGMも3月23日付で長距離ヘッドホール乾貨物に150ドル/TEU・冷蔵貨物に180ドル/TEU・バックホールと域内航路に75ドル/TEUの緊急燃料割増金を適用すると発表した。Freightos Baltic Indexの中国/東アジア〜北欧向けは3月13日に前週比10%上昇し2,883ドル/FEUを記録しており、これは同指数で最も急激な週次上昇率となった。 euronews
トランスパシフィックも前週比200ドル・約10%上昇し2,022ドル/FEUとなり、東海岸向けは3,000ドル/FEU超へ上昇した。アジア〜欧州は前週比6%上昇し約2,600ドル/FEU、地中海向けは2%上昇し約3,700ドル/FEUとなった。ただしFreightosはこれらの上昇は「中国春節明けの季節的需要回復が主因であり、イラン紛争の影響は限定的」と分析している。 The Jerusalem Post
構造的な要因
コンテナが湾岸港に積み上がり通常の循環に戻れないため、グローバルなコンテナ機器不足が発生しつつある。危機が早期に緩和された場合でも、大量の船舶が一斉に港湾に到着することで混雑が生じ、2024年の紅海危機初期と同様の「バンチング」パターンが繰り返される可能性がある。中国は石油輸入の約40%・日本は中東産原油の70%がホルムズ経由であり、日本はすでに政府に戦略石油備蓄の放出を要請している。 Al Jazeera
国際航空貨物運賃の動向
3月12日時点の最新運賃水準(Freightos)
開戦以来の累計上昇率として、南アジア〜北米が約50%上昇し6.00ドル/kg前後、南アジア〜欧州が約50%上昇し4.00ドル/kg前後となった。東南アジア〜欧州は約20%上昇し4.00ドル/kg超、中国〜米国は約20%上昇し7.00ドル/kg超となっている(ただし中国〜米国の上昇分は春節明けの季節需要増も含む)。 The Times of Israel
部分的な回復と残存するリスク
UAEが1時間あたり48便の安全航空回廊を開設し、エミレーツ航空が予定便数の50%超を運航中と報告した。一方カタール航空は依然として大幅な運航制限が続いており、エミレーツスカイカーゴも新規予約の全面再開には至っていない。グローバルの航空貨物キャパシティはエミレーツ・カタール航空・エティハドの運航停止・制限によって約13〜18%減少しており、アジア〜欧州回廊では約40%のキャパシティが消失した状態が続いている。 The Times of Israel
コンテナ輸送への直接的影響はホルムズ向け貨物に集中しているが、インドやバングラデシュなどの港湾でバックログが積み上がっており、極東トランスシップハブの稼働率も上昇している。 Wikipedia
総括
開戦17日目、外相が停戦要求を公式否定する一方でトランプ大統領が「取引が近い」と示唆するという二重メッセージが続いている。運賃面では、湾岸向けの直接的打撃に加え、マースク・CMA CGMによる全航路への緊急燃料割増金導入という形でコスト増がグローバル全体に「漏出」し始めた局面に入った。SCFIが開戦前比28%上昇・中東航路41%急騰・主要船社による全航路への燃料割増金導入・航空貨物の南アジア発着50%急騰という具体的な数字が揃い、IMOが緊急会合を開催するなど国際機関レベルでも事態の深刻さが認識されている。 euronews 停戦への出口がわずかに見え始めてはいるものの、即時収束は現実的でなく、運賃の高止まりと全航路への波及がさらに進む局面が続く見通しだ。