紛争の現状
開戦14日目、停戦に向けた初めての具体的な動きが表面化しつつある一方、戦闘は依然継続中だ。
イランのペゼシュキアン大統領はX(旧Twitter)に「イランの平和への関与」を確認する投稿を行い、「この戦争を終わらせる唯一の方法はイランの正当な権利の承認、損害賠償の支払い、将来の攻撃に対する確固とした国際的保証だ」と停戦条件を初めて公式に示した。アナリストはこれをテヘランからの事実上のデエスカレーションシグナルと受け止めており、ロシア・パキスタンとの電話協議でも「平和への関与」を確認したと伝えられる。 Freightos
一方、新最高指導者モジュタバー・ハメネイ師は初の公式声明でホルムズ海峡の閉鎖継続と湾岸の米軍基地への攻撃継続を誓い、強硬姿勢を崩していない。 Freightos
エネルギーの武器化も深刻化している。イスラエルは3月8日にイランの石油施設への攻撃を開始。イランはこれに対し湾岸の石油・ガスインフラを「炎上させる」能力があると警告し、「世界経済を破壊できる長期戦の準備ができている」と宣言した。原油価格は戦前の65ドルから100ドル超へと急騰し、4年ぶりの高値を記録している。 Freightos
フーシー派は開戦後も「紅海への連帯攻撃再開」を繰り返し警告しているが、2025年のイスラエル空爆による指導部弱体化と米フーシー停戦の維持を優先し、実際の攻撃には至っていない。 FreightWaves
金融市場への打撃も深刻で、ダウ工業株30種平均が2026年最安値となる47,000ドルを下回り700ドル超の下落を記録した。 Lloyd’s List
国際コンテナ運賃の動向
ホルムズ封鎖の固定化と湾岸向け運賃
Linerlytic推計では、ペルシャ湾内に閉じ込められたコンテナ船は約170隻、総キャパシティは約45万TEU(世界コンテナ船隊の約1.4%)に達し、海峡を出られない状態が続いている。一方Alphalinaerは約140隻のコンテナ船が湾岸に滞留中とし、MSCとCMA CGMが最も影響を受けていると報告した。 CNN
上海〜ジェベルアリのスポット運賃は、ホルムズ完全閉鎖前の数週間で40フィートあたり4,200ドル前後まで55%急騰した。戦争リスク保険料は船体価値の0.125%から0.2〜0.4%へと急騰し、米国・イスラエルと関係する船舶については現時点でいかなる価格でも保険引受不能となっている。 Wikipedia
グローバル主要航路への波及
Xenetaのピーター・サンド首席アナリストは「今回の攻撃が2026年の紅海への大規模回帰の希望を完全に粉砕した」と断言した。喜望峰迂回継続によって吸収される世界コンテナ船腹キャパシティは約250万TEUにのぼり、この構造的な制約によってグローバル運賃は2026年後半にかけて想定より緩やかにしか下落しない見通しだ。開戦前と比較した主要航路の運賃水準は、中国〜北米東海岸が▲32%、同西海岸が▲35%、北欧向けが▲23%、地中海向けが▲33%と軟調ではあるものの、2023年12月(紅海危機前)比では北欧向けが+48%、地中海向けが+79%と依然高止まりしている。 The Washington Post
Drewryは「イラン紛争が港湾混雑、緊急迂回、戦争リスク保険料の上昇、燃料コスト増加、グローバルサプライチェーンの不確実性の増大を引き起こしている」と総括した。 The Jerusalem Post
国際航空貨物運賃の動向
キャパシティ喪失の規模と運賃上昇
航空貨物のキャパシティへの打撃は深刻だ。世界最大の非エクスプレス貨物航空会社であるカタール航空カーゴ(747型貨物機29機運航)はドーハ閉鎖で全便を停止し、世界各地の貨物ステーションで積荷が滞留している。エミレーツスカイカーゴ(世界第4位)もドバイ便を停止し新規予約を全面停止した。空路を含む全輸送モードで、グローバルの航空貨物キャパシティは前週比18%減少し、そのうち13%はエミレーツ・カタール航空・エティハドといった中東系キャリアの運航停止に起因している。アジア太平洋〜中東・南アジア〜欧州回廊全体では貨物トンキロメートル換算で約40%のキャパシティが消失した。 The Times of Israel
Freightos Air Indexによる運賃変化は、東南アジア〜欧州が開戦前比6%超上昇し3.82ドル/kg、南アジア〜欧州が3%上昇、南アジア〜米国が5%上昇、中東〜欧州が8%上昇し1.62ドル/kg、中国〜米国が15%上昇し6.90ドル/kgとなっている。 euronews
Xenetaの最高航空貨物責任者ニール・ファン・デ・ウウ氏は「紛争が長期化すれば、中東のハブ閉鎖の直撃を受ける航空回廊でスポット運賃が短期的に2〜3倍に達する可能性がある」と警告した。インド〜米国東海岸の医薬品・小売品の重要航路も中東トランジットに依存しており、欧州向けだけでなく米国も脆弱な立場にあると指摘した。 NBC News
代替ルートの模索
キューネ+ナーゲルは欧州・米国向け貨物のバックログが週内にアジアで積み上がり始めると警告し、フォワーダー各社は直行チャーター便の手配を急いでいる。代替ルートとして、モルディブ経由の海上・航空複合(シー・エア)サービス、中国の西安からウズベキスタンのタシュケントへの陸上トラック輸送後に貨物機へのリロード、チェンナイ経由のシー・エアサービスなどが検討されている。 The Times of Israel
総括
開戦14日目の本日、ペゼシュキアン大統領が停戦条件を初めて公示したことで、わずかな「出口」が見え始めた。しかし新最高指導者のホルムズ閉鎖継続宣言、石油施設への攻撃の応酬、原油100ドル超という現実は、即時収束とはほど遠い状況を示している。コンテナ運賃は湾岸向けを直撃しながら喜望峰迂回の長期化を通じてグローバル全航路の高止まりをもたらしており、航空貨物は中東ハブ壊滅で2〜3倍の運賃急騰リスクをはらむ状況が続いている。