紛争の現状

2月28日の「オペレーション・エピック・フューリー」開始以来、米・イスラエルはイランの軍事・核・政府施設への攻撃を継続。イランはUAE・サウジアラビア・カタール・クウェート・バーレーン・イラク・オマーン・ヨルダンの米軍施設・石油インフラを標的にドローンと弾道ミサイルで報復を続けている。 The National

本日、米軍はホルムズ海峡付近でイランの機雷敷設艦16隻を含む海軍艦船を撃破したと発表。テヘランが機雷敷設を開始していたことが明らかになり、事実上の閉鎖状態にある海峡の状況がさらに悪化した。 NBC New York

イランはこれまでに死者1,200人超(イラン・レバノン合計)を出しながらも徹底抗戦の姿勢を崩さず、外相アラグチ氏は「交渉を2度経験したが、いずれも交渉中に攻撃された。再び交渉する理由はない」と述べた。トランプ大統領は「戦争はかなり早く終わる」と楽観論を示す一方、「今週中には終わらない」とも明言しており、即時収束のシナリオは現実的でない。 CNBC

フーシー派については、イラン攻撃後も紅海への大規模攻撃再開には至っておらず、2025年の米・フーシー停戦を維持しつつ政治的連帯声明にとどめている。指導部がイスラエルの空爆で弱体化していることも抑制要因となっている。 FreightWaves


国際コンテナ運賃の動向

運賃の現状水準

3月10日付Freightos最新レポートによると、中国〜北米は前週比11%上昇、中国〜北欧は2%上昇、北欧〜北米は9%下落となった。Drewry世界コンテナ指数(3月5日終了週)はグローバル平均が3%上昇し40フィートあたり1,958ドル。上海〜ロサンゼルスは10%上昇の2,402ドル、上海〜ニューヨークは7%上昇の2,977ドルを記録した。 The Washington Post

Freightosは「コンテナ市場全体への影響は現時点では限定的で、直接的な混乱は湾岸港向けの貨物に集中している。ただし、石油価格上昇に伴う燃料コスト増加が全航路に波及しつつある」と分析。CMA CGMとハパックロイドは3月23日から全航路に対し短距離70〜75ドル/TEU、長距離150ドル/TEUの緊急燃料割増金の導入を発表しており、他船社も追随する見込みだ。 The Washington Post

湾岸向けの直接的打撃

2月28日のイランによる航行禁止宣言以来、ホルムズ海峡のタンカー通航は事実上ゼロとなり、150隻以上の船舶が海峡外で停泊待機中だ。3月5日付でP&I保険(船主責任保険)の適用が撤廃され、マースク・MSC・CMA CGM・ハパックロイド・COSCOの全主要船社がホルムズ通航を停止。喜望峰迂回が定着している。 euronews

現時点で標準的な20フィートコンテナの運賃は約200ドル上昇し、業界推計では15〜20%の値上がりとなっている。湾岸沖では130隻以上の船舶が足止めされており、一部船社はすでに喜望峰迂回ルートへの切り替えを実施。コスト増が最終的に消費者価格に波及する見通しだ。 CNN

ハパックロイドは3月2日以降の全予約に1,500ドル/TEUの戦争リスク割増金を適用中。例えば湾岸向けにアルミニウム地金20トンを20フィートコンテナ1本で輸送する場合、この割増金だけで1トン当たり75ドルの追加コストとなる。 NBC News

構造的な問題

Drewryは「燃料コストの上昇・戦争リスク保険料の増大・運航上の混乱が、コンテナ輸送の運賃上昇に転嫁されうる」と警告。スエズ経由回帰を計画していた一部船社がその計画を再び撤回しており、実質的な船腹キャパシティの制約が続く。 OPB


国際航空貨物運賃の動向

具体的な運賃上昇率(最新データ)

Freightos Air Indexによると、開戦前と比較して東南アジア〜北米は約50%急騰し現在6.00ドル/kg、東南アジア〜欧州は20%上昇し4.00ドル/kg超、中東〜欧州は8%上昇し1.62ドル/kg、中国〜米国は20%上昇し7.00ドル/kg超となっている。なお中国〜米国の上昇分は、春節明けの需要増も重なっており、一部はイラン紛争以外の要因による可能性がある。 The Washington Post

Bloomberg(3月5日)によると、東南アジア〜欧州は開戦前日比6%上昇し3.82ドル/kg、中東〜欧州は8%上昇し1.62ドル/kg、中国〜米国は15%上昇し6.90ドル/kgとなっている。 Al Jazeera

ジェット燃料コストの急騰

ジェット燃料の国際価格はPlattsベンチマークで1バレル173.91ドルと、1月初旬比でほぼ倍増した。「原油価格が上がれば航空会社の利益は直ちに減少する」(モンペリエ・ビジネススクール、ポール・シャンバレット教授)という構造的な関係から、航空運賃への転嫁は不可避な状況だ。 CNN

部分的な回復

開戦初期に完全閉鎖されていた湾岸の主要空港は、この数日で部分的な再開が進んでいる。UAEは1時間あたり48便の出発が可能な安全航空回廊を開設し、エミレーツ航空は現在予定便数の50%超を運航中と報告した。ただしカタール航空は依然として運航を大幅制限しており、エミレーツスカイカーゴも新規予約の全面再開には至っていない。 The Washington Post


総括

開戦13日目、イラン海軍の機雷敷設が確認されホルムズ海峡の状況はさらに深刻化している。コンテナ運賃への直接的な影響は依然として湾岸向けに集中しており、グローバル主要航路への全面波及はまだ限定的だが、燃料割増金の導入が全航路の運賃底上げを始めつつある。航空貨物は東南アジア〜北米で開戦来50%の急騰が確認されており、湾岸空港の部分再開で若干の緩和が見られるものの、ジェット燃料価格のほぼ倍増という構造的コスト増が運賃の高止まりを長期化させる見通しだ。今回の2026年ホルムズ危機は、2024年紅海危機・コロナ後の港湾混雑に続く「3年連続の主要チョークポイント閉鎖」であり、効率性を優先して構築されたグローバルサプライチェーンの構造的脆弱性が再び露わになっている。 euronews