紛争の現状
開戦11日目、イランはモジュタバー・ハメネイ師を新最高指導者に任命した。亡き父ハメネイ師の次男であり、イラン軍と政治指導部が早速忠誠を誓った。一方、米・イスラエルの攻撃は依然として継続中で、クム・テヘランへの爆撃が確認されている。 FreightWaves
最高指導部の外交顧問カラル・ハラジ氏は「政府は長期戦に備えており、今は外交の時ではない。経済的な痛みを通じてのみ戦争は終わる」と明言し、停戦交渉を全面拒否した。 Freightos
イランはUAE・カタール・クウェート・サウジアラビアへの攻撃を継続しており、クウェート国際空港の燃料貯蔵施設が標的となった。サウジアラビアのシャイバー油田に向かうドローンも迎撃された。 CNBC
金融市場への衝撃も深刻で、原油価格が1バレル100ドルを超えて2022年7月以来の高値となり、韓国コスピが8%超下落、日本の日経225も7%近く下落するなどアジア株が軒並み急落した。 FreightWaves
ホルムズ海峡の固定化した閉鎖状態
2月28日にイランがホルムズ海峡への航行禁止を宣言して以来、タンカー通航は事実上ゼロとなり、150隻以上の船舶が海峡外に停泊したまま待機中だ。3月5日には戦争リスク保険の適用が撤廃され、経済的に通過が不可能な状態が固定化している。マースク・MSC・CMA CGM・ハパックロイド・COSCOの全主要船社が通航を停止し、喜望峰迂回に切り替えた。 Al Jazeera
Energy Aspectsの創業者アミリタ・セン氏は「米国の軍事力でホルムズを物理的に封鎖するイランの能力は排除できる。しかしタンカーへの散発的な一撃を防ぐことはできず、それだけで市場は極めて慎重になる。これが現実の混乱を生み出している」と分析した。 NBC News
国際コンテナ運賃への影響
即時的打撃の規模
今回の2026年ホルムズ危機は、2024年紅海危機、そしてコロナ後の港湾混雑に続く「3年連続の主要チョークポイント閉鎖」という前例のない事態だ。紅海には喜望峰回りという代替ルートがあり所要日数が10〜14日増加するが貨物は動く。しかしホルムズが閉鎖されると湾岸港への貨物は遅くなるのではなく「完全に止まる」という構造的な違いがある。 Al Jazeera
運賃水準の現状
直近のDrewry世界コンテナ指数では、3月5日終了週にグローバル平均が3%上昇し40フィートあたり1,958ドルとなった。トランスパシフィックは比較的堅調で、上海〜ロサンゼルスが10%上昇の2,402ドル、上海〜ニューヨークが7%上昇の2,977ドルと記録した。一方、アジア〜欧州は上海〜ロッテルダムが2%下落の2,052ドルと軟調で、直接的な影響は現時点では中東向けに集中している。 OPB
割増金の実態
マースクは3月2日付でホルムズ閉鎖に伴う緊急運賃値上げを正式発動し、UAE・カタール・サウジアラビア・バーレーン・クウェート・イラク・オマーン向け全域を対象に、船荷証券第20条の権利に基づき即時適用している。 The Washington Post
ハパックロイドはイラク・バーレーン・クウェート・カタール・オマーン・UAE・サウジアラビア(ダンマン・ジュバイル)向けの全予約に対し1,500ドル/TEUの戦争リスク割増金を適用している。湾岸向けのアルミニウム地金20トン積みのコンテナ1本では、この割増金だけで1トン当たり75ドルの追加コストとなる。 Fox News
グローバル運賃への構造的波及
コンテナ海運も影響を受けており、主要船社は中東地域から完全撤退し、最近スエズ運河通航を一部再開していたマースクなどもその計画を全面撤回した。戦争関連の保険条項が保険料を押し上げる中、多くのシッパーが中東経由のトランジットポイントを全面回避する方向に動いている。 The Jerusalem Post
Xenetaのピーター・サンド首席アナリストは「少なくとも紛争が続く限り、中東向け運賃の上昇を織り込むべきだ。海上輸送に代替手段は存在しない。地政学リスクがかつてない頻度と深刻さで現れており、業界には10の緊急計画を立てても全て無効にされるという疲弊感もある」と述べた。 NBC News
国際航空貨物運賃への影響
エネルギー価格急騰によるダブルパンチ
QatarEnergyがラス・ラファン・メサイード両施設への攻撃を受けてLNG生産を全面停止した。欧州の天然ガス先物は30%急騰し、米国の天然ガス価格も5%上昇した。LNGタンカーの日次運賃は月曜日に40%以上急騰しており、欧州向けジェット燃料の約20%を供給するカタールのLNG生産停止が航空燃料コストに直接的な圧力をかけている。 euronews
VLCCの基準運賃(中東〜中国)が1日42万3,736ドルと過去最高を記録し、前週末比94%超の急騰となった。船舶評価額1億5,000万ドルのコンテナ船では1航海あたりの保険料が37万5,000ドルから75万ドルへと倍増しており、このコスト増がシッパーへの割増金に転嫁される。 CNN
総括
新最高指導者モジュタバー・ハメネイ師の就任後も停戦拒否の姿勢は変わらず、トランプ政権もさらなる攻撃を予告している。ホルムズ海峡の事実上の閉鎖はP&I保険の適用撤廃によって経済的に固定化され、喜望峰迂回への転換は長期化が確実となった。コンテナ運賃は湾岸向けを直撃しながらグローバル航路全体にじわじわと波及しており、LNG生産停止によるジェット燃料コストの急騰と相まって、航空貨物コストも数週間以内に大幅上昇局面に入ることが避けられない状況だ。