紛争の現状
開戦9日目を迎えた現在も、紛争は激化の一途をたどっている。イラン大統領ペゼシュキアン氏はトランプ大統領が要求する「無条件降伏」を公式に拒否し、「イランは絶対に屈服しない」と表明。イランは引き続きイスラエルと湾岸地域の各国にドローンと弾道ミサイルで攻撃を継続している。 CTOL Digital Solutions
イランは開戦以来、500発超の弾道・艦艇用ミサイルと約2,000機のドローンを発射。そのうち約40%がイスラエル向け、約60%が中東の米軍施設向けに発射されている。ただし弾道ミサイルの発射ペースは開戦当初から4月3日にかけて低下しており、アナリストはイランのミサイル・ランチャーの在庫枯渇と、長期戦を見据えた温存戦略の両方を要因として指摘している。 FreightWaves
イラン外相アラグチ氏は米国との停戦交渉を全面拒否し、米軍の地上侵攻にも対抗できると宣言。一方でトランプ大統領は「さらに激しい」攻撃を予告しており、短期収束は見込めない状況が続いている。 CNBC
英国首相スターマー氏はホルムズ海峡の開放維持に向けた支援を表明。ロシアはイランに対して米艦船・航空機の位置情報を提供しているとの報告もあり、紛争の多極化が進んでいる。 Freightos
ホルムズ海峡の現状
3月2日深夜を境に海峡内のAIS信号がほぼゼロとなり、交通量は事実上の停止状態が続いている。IRGCが「完全な制御を達成した」と宣言した3月4日までに少なくとも8隻が被弾。P&I保険(船主責任保険)が3月5日付で適用撤廃となり、船主が経済的に通過できない状態が固定化されている。 Wikipedia
海事情報会社ウィンドワードの上席アナリスト、ミシェル・ボックマン氏は「通航量は少なくとも80%減少している」と述べた。現在、海峡を通過しているのは事実上イランと中国の船舶のみだ。 euronews
国際コンテナ運賃への影響
即時的な打撃:湾岸向け貨物の完全停止
ホルムズ海峡には迂回路が存在しない。紅海には喜望峰回りという代替ルートがあり、所要日数は10〜14日増加するが貨物は動く。しかしホルムズが閉鎖されると湾岸港は完全に遮断され、貨物は遅くなるのではなく「止まる」。攻撃開始時点で当該地域を航行中だった約13万5,000TEU、推定40億ドル相当の貨物のうち、米国・欧州向けの約2万2,000TEU(約8億7,700万ドル)が宙に浮いている状態だ。 CNN
TPM26(トランス・パシフィック・マリタイム会議)でONEのジェレミー・ニクソンCEOは「現在、約750隻がホルムズ閉鎖の影響で滞留しており、うち約100隻がコンテナ船だ。これはグローバルコンテナ船隊の約10%に相当する」と述べた。マースク、MSC、ハパックロイド、CMA CGMを含む主要船社は全社が中東向けの新規予約を停止している。 The Jerusalem Post
運賃・割増金の実態
マースクはホルムズ海峡閉鎖に伴う緊急運賃値上げを3月2日付で発動。UAE・カタール・サウジアラビア(ダンマン・ジュバイル)・バーレーン・クウェート・イラク・オマーン(ソハール)向け全域が対象で、通常コンテナから冷蔵・特殊コンテナまで幅広く適用されている。 NBC News
戦争リスク保険料は攻撃前の0.25%から0.5%超に倍増。船舶評価額1億5,000万ドルのコンテナ船では、1航海あたりの保険料が37万5,000ドルから75万ドルへと跳ね上がり、そのコストはシッパーへの割増金として転嫁されることが確実だ。 CNN
グローバル運賃への波及
中東への直接荷送りがない企業でも、アジア〜欧州路線(喜望峰迂回への増加)、イントラアジア(シンガポール混雑の波及)、トランスパシフィック(機器の不均衡)で間接的な運賃上昇圧力にさらされるとニクソン氏は指摘した。 The Jerusalem Post
今後7〜30日では、アジア〜欧州の代替ルートのスポット運賃が40〜80%上昇する見通し。3〜6カ月の中期では、湾岸の混乱が2026年第2四半期まで長期化した場合、原油価格は1バレル90〜120ドルで推移し、バンカー燃料と保険コストの高止まりが続くと予測されている。 Al Jazeera
国際航空貨物運賃への影響
イラン・イラク・イスラエル・UAE・カタール・バーレーン・クウェート・ヨルダンの上空閉鎖により1,600便以上がキャンセルされ、中東域内の航空貨物オプションが完全に消滅した。時間厳守・高付加価値貨物は、容量と安全リスクが高まる海上輸送か陸上輸送に頼らざるを得ない状況だ。 Al Jazeera
VLCCの基準運賃が3月3日(月)に1日42万3,736ドルと過去最高を記録し、前週末比94%超急騰した。このコスト圧力はタンカー市場にとどまらず、コンテナ船社の燃料コスト全体にも波及している。欧州向けジェット燃料の約30%がホルムズ経由で供給されており、LNGも世界供給量の約20%が同海峡を通過する。これらの供給途絶が航空燃料コストの急騰に拍車をかけている。 OPB
主要船社は全社が中東域内から完全撤退し、スエズ経由への復帰も同時に断念した。戦争関連の保険条項が保険料を押し上げる中、多くのシッパーが中東のトランジットポイントを全面的に回避する方向に動いている。 The Washington Post
総括
開戦9日目の現時点で、ホルムズ海峡の事実上の閉鎖は固定化しつつある。イランが停戦を拒否し、米国がさらなる攻撃を予告している以上、短期収束シナリオは現実的ではない。コンテナ運賃は湾岸向けを中心に緊急割増金が既に発動されており、中期的にはアジア〜欧州の基幹航路全体に波及することが避けられない。航空貨物は中東ハブの壊滅と欧州向けジェット燃料の供給途絶が重なり、数週間以内に大幅な運賃急騰局面に入ることが濃厚だ。