最新の戦況

開戦から7日が経過した現在、紛争は収束の兆しが見えないどころか、地域的な拡大を続けている。米・イスラエルによる合同作戦はイランの31州のうち少なくとも26州で数百か所を攻撃しており、テヘランが最も激しい標的となっている。 Lloyd’s List

イラン外務大臣は「イランは停戦を求めておらず、米国との交渉を拒否する」と公式に表明した。一方でイラン情報省は別ルートを通じてCIAに接触し、停戦条件の協議を打診したとの報道もある。しかしトランプ大統領は「交渉相手となりうる人物の多くがすでに死亡している」と述べており、誰が停戦に署名できるかすら不透明な状況だ。 CNBC

軍事面では、イランは初めてカタールのアル・ウデイド空軍基地(米軍約1万人が駐留)にSu-24戦闘機2機を向けて攻撃を試みたが、カタール軍のF-15が撃墜した。また初めてアゼルバイジャンのナヒチェバン地区に自爆ドローンが着弾し、紛争の地理的拡大が進んでいる。バーレーンは非常事態を宣言し、ハリーファ・ビン・サルマン港の運航を停止した。 Freightos

米国内では、戦争権限決議がいずれもトランプ大統領を拘束できずに終わった。上院は47対53で否決、下院も212対219で否決し、軍事行動の継続に法的歯止めはかからない状況だ。 NBC New York


ホルムズ海峡の現状

3月2日深夜以降、ホルムズ海峡でAIS信号を発信するタンカーがほぼゼロとなり、通航が事実上停止した。3月5日には船主にとって経済的拠り所となるP&I保険(船主責任保険)の適用が撤廃され、経済的リスクが許容限界を超えた。 Fox News

ウィンドワード社の上席海事情報アナリスト、ミシェル・ボックマン氏は「交通量は少なくとも80%減少している」と述べた。イランのIRGC司令官は「海峡は閉鎖されており、通過しようとするいかなる船舶にも火を放つ」と公式に宣言している。現在、海峡を通過しているのは事実上イランと中国の船舶のみだ。 OPB

VLCCの基準運賃(中東〜中国向け)は月曜日に史上最高値の1日あたり42万3,736ドルを記録し、前週末比94%超の急騰となった。 CNN


国際コンテナ運賃への影響

緊急割増金の実態

CMA CGMは湾岸向け40フィートコンテナに4,000ドルの緊急割増金を導入。ハパックロイドは標準コンテナに1,500ドル/TEU、冷蔵・特殊コンテナに3,500ドル/TEUの戦争リスク割増金を3月2日付で適用している。マースク、MSC、COSCOも湾岸向けの新規予約を事実上停止または大幅制限している。 The Washington Post

構造的な運賃上昇

Vespucci MaritimeのラースイェンセンCEOは「即時の影響は湾岸向け貨物への3,000ドル/40フィートの緊急割増金だが、これはあくまで始まりにすぎない。湾岸に向かっていた船舶が行き場を失い、周辺ハブ(サラーラ、コロンボ等)に荷を下ろすことで深刻な港湾混雑が発生する。これは2024年の紅海危機勃発時とまったく同じシナリオだ」と述べた。 Wikipedia

Xenetaのピーター・サンド首席アナリストは今回の事態が「貿易のさらなる武器化」をもたらし、2026年に期待されていたスエズ経由への大規模回帰を完全に粉砕したと断言した。フーシー派が紅海への攻撃を再開した場合、ホルムズと紅海の二重封鎖が確定し、喜望峰迂回が長期化する。 Al Jazeera


国際航空貨物運賃への影響

ハブ壊滅の深刻さ

カタール航空(貨物機29機運航)はドーハの空域閉鎖で全便を停止し、世界各地の貨物ステーションで積荷が滞留中だ。エミレーツスカイカーゴ(世界第4位の航空貨物会社)もドバイ便を停止し、新規予約を全面停止した。FedExはバーレーン・イラン・イラク・イスラエル・ヨルダン・クウェート・レバノン・オマーン・カタール・UAE・サウジアラビアへの全フライトを停止している。 The Washington Post

カタールの国営エネルギー企業QatarEnergyは、ラス・ラファン工業都市とメサイード工業都市の施設への攻撃を受け、LNGおよび関連製品の生産を全面停止した。これにより欧州向け天然ガス先物は30%急騰し、世界のジェット燃料供給にも深刻な影響が及んでいる。 euronews

運賃上昇の見通し

航空貨物業界のアナリスト、ドミトリー・クリッシュ氏は「大規模なフライトキャンセルが続けば、特にアジア〜欧州路線で運賃が大幅に上昇する可能性がある。ただし春節明けで中国輸出がまだ本格回復していない時期にあたり、航空機の供給に若干の余裕があるため、即時の急騰をわずかに抑制している。この緩衝材は1〜2週間以内に消え去る」と警告した。 The Washington Post


今後の見通し

イランが停戦交渉を公式に拒否しており、米国務長官が「最も激しい攻撃はこれから」と明言している以上、短期的な収束は見込めない。ホルムズ海峡の実質閉鎖と紅海の再封鎖が重なる「二重封鎖」が週単位で継続すれば、湾岸向けのコンテナ運賃は現在の緊急割増金水準をさらに上回り、アジア〜欧州間の基幹航路の運賃も高止まりが長期化する。航空貨物については、ドバイ・ドーハという2大ハブの機能停止が続く限り、医薬品・電子機器・生鮮食品を中心に深刻な供給制約とコスト急騰が避けられない状況だ。