事例とテンプレート
一次情報の事例では、投資判断に効くICPとして4,000円(省エネ等の直近価格)に加え、将来炭素価格を見込んだ20,000円を投資用不動産の判断基準に設定する例が示されている。これを物流施設・倉庫投資に当てはめると、ZEB/再エネ/高効率空調の“炭素価値”をNPVに上乗せでき、採否が逆転する案件が出る。短期で整えるべき成果物は、①目的・適用範囲・価格根拠の方針書、②稟議テンプレ(CO₂削減量とICP加算欄)、③データ算定手順書、④価格見直し・予算管理のPDCA設計、の4点である。
不動産・物流施設を含む企業での“価格二層”の例
entity[“company”,”大和ハウス工業”,”japanese homebuilder”]の事例(環境省資料)では、ICP導入目的としてScope3カテゴリ11(商品・サービス)のCO₂排出量削減を掲げ、従来の4,000円に加えて20,000円を不動産投資判断の価格として設定し、建物が数十年利用されることから将来のICP価格を加味した旨が示されています。
同趣旨の整理として、別資料でも不動産関連投資に20,000円/t-CO₂、その他(省エネ設備投資などの評価)に4,000円/t-CO₂を採用する表示があります。
投資評価への組込み(NPV/IRRへ“削減価値”を加算)
環境省ガイドの企業事例集では、設備投資のNPV/IRRを算出する際に、省エネ効果をプラス要因、投資額をマイナス要因としつつ、CO₂削減量とICPから算出した値を加算する、という運用が記載されています。
また、CO₂削減量×ICP(例:500t×2万円)を「みなし利益」として不動産価値・投資利回りの算定に上乗せする図示があり、物流施設(長寿命資産)に最も相性が良い計算形です。
設備投資における閾値設定(一定額以上の案件から始める)
ロームは社内炭素価格20,000円/t-CO₂を設定し、1,000万円以上の付帯設備投資等を対象に、投資判断の指標として活用する制度概要を公表しています。
同様の内容は、経産省関東局の事例資料としても示されています(2024年10月導入、一定額以上の設備投資を対象、炭素価格2万円/t-CO₂を投資判断に反映)。
チェックリスト
経営者・管理職向け
環境省ガイドが示す運用要素(投資判断・予算管理・データ管理・決裁フロー)を最低限の社内文書に落とし込むことが重要です。
– 「ICP方針書」:目的(投資・調達・契約・Scope3)、適用範囲、方式(Shadow等)、価格レンジ、見直しトリガー
– 「稟議テンプレ」:活動量、排出量、差分排出量、炭素価値(差分×ICP)、NPV/IRRへの反映方法
– 「算定手順書」:データ責任(現場/本社)、排出係数の採用ルール、監査・レビュー手順
– 「予算・PDCA設計」:ICP予算の運用パターン選択、実績蓄積→次年度予算/価格へ反映するサイクル
稟議テンプレ
投資判断にICPを入れた企業の開示・事例では、価格と用途が簡潔に示されることがポイントになります。
– ICP価格(円/t-CO₂):適用するレンジ(例:短命資産用、長寿命資産用)
– 対象Scope:Scope1/2(必要に応じてScope3)
– CO₂削減量の根拠:ベースラインと更新後の活動量、排出係数
– 財務反映:炭素価値の扱い(NPVに加算/投資利回りに上乗せ など)
– 見直し:年次+例外改定(外部価格参照、突発案件時の都度見直し)