令和6年の 能登半島地震 では、陸路寸断を前提に、広域物資輸送拠点と複数の輸送モード(陸・空等)を組み合わせる運用が実際に行われた。
内閣府等の公表資料によれば、被災自治体からの要請を待たずに物資を届ける「プッシュ型支援」が立ち上げられ、その後も一定期間にわたり継続された。
この事例から読み取れる物流企業にとっての示唆は、特定の手段の優劣ではなく、
- ① 広域拠点につながる能力
- ② 輸送モードを切り替え、接続する判断・実行力
を、平時から事業能力として備えているかにあると整理できる。
能登半島地震の概要と物流上の前提条件
発災直後の制約条件
- 発災:2024年1月1日
- 半島特有の地理条件により、道路寸断・悪路が広範囲で発生
- 陸路単独では物資到達に時間を要する可能性が高い状況
なぜ「広域拠点 × 代替輸送」が前提となったのか
- 被災地内での集約・仕分機能が限定的
- 被災自治体単独では調達・輸送・配分を同時に担うことが困難
- 被災地外に一度集約する構造が現実的な選択肢となった
一次情報で追う:物資調達・輸送のタイムライン(初動〜展開)
1/1(発災当日):プッシュ型支援の立ち上げ
- 関係府省庁・業界団体が連携し、必需品の調達を開始
- 被災自治体からの正式要請を待たずに動く仕組みが適用されたとされる
1/2:広域物資輸送拠点への集約
- 食料支援(例:パン)が 石川県産業展示館 に到着
- 受入・仕分・搬送といった中継機能が稼働
陸路悪化に伴う輸送モードの切替
- 陸路のみでは時間を要する区間について、空路等を併用
- 現地状況に応じて輸送手段を柔軟に選択する運用が行われた
結果:長期にわたる支援の基盤に
- 初動対応が、その後の継続的な物資供給の土台となったと整理できる
災害物流の原理:広域拠点と代替輸送でボトルネックを外す
基本構造
- 広域物資輸送拠点
→ 被災自治体
→ 避難所・被災者
ボトルネックの発生点
- 道路寸断・通行制限
- 拠点での受入・仕分・保管能力の上限
原理的対応
- 陸路が詰まる局面では、空路等でボトルネックを回避
- 単一モード前提では機能しにくい構造であることが示唆される
実務視点:一次資料から読み取れるオペレーションの特徴
実務フロー(連続実行が前提)
- 物資調達(プッシュ型)
- 広域拠点での受入・仕分・在庫管理
- 陸路輸送
- 遅延・寸断時の代替輸送投入(空路等)
物流企業にとっての実務論点
- 広域拠点の受入・処理能力に対応可能か
- 短時間で輸送モードを切り替える判断・手配ができる体制か
経営視点:物流企業に突きつけられた構造的課題
災害対応は「特別業務」ではなく事業能力
- 災害時にも機能する物流企業は、社会インフラの一部として認識されやすい
- 行政・荷主からの信頼が、中長期の取引関係に影響する可能性がある
経営論点①:広域拠点との接続力
- 自治体指定拠点の位置・役割の把握
- 受入・搬出条件、運用ルールの事前理解
経営論点②:代替輸送への接続設計
- 空路・海路・他社ネットワークとの連携余地
- 自社単独で完結しない前提のBCP設計
今すぐやること(一次情報に基づく整理)
事前に整理しておきたい項目
- 広域物資輸送拠点の
- 搬入条件
- 運用ルール
- 役割分担
- 陸路寸断時の代替輸送(空路等)について
- 連絡系統
- 手配手順をBCPに明文化
中長期課題:事例を「再現可能な力」に変える
事例ベースでの制度化
- 拠点処理能力の上限値
- 輸送モード切替の判断条件
- 実動訓練を通じた更新
災害物流を経営資源へ
- 災害対応力を BCP → サービス → 競争力 へ段階的に昇華
- 荷主・自治体との共同訓練・協定の価値
参照先・一次情報
- 内閣府 防災情報
https://www.bousai.go.jp/ - 内閣府「令和6年能登半島地震に係る物資支援等について」
https://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/kyuujo.html - 石川県公式サイト(災害対応・物資支援)
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/