1. 世界全体に占める国際海運のGHG排出(現状)

  • 世界全体のシェア:国際海運は、世界の温室効果ガス排出の約2.8〜3.0%程度と整理されることが多いです(推計・定義により差があります)。(スプリンガーリンク)
  • 排出量規模:2018年の国際海運のCO₂排出量は、**約1,076百万トン(≒約1.1Gt CO₂)**と報告されています(※「約1Gt前後」といった目安表現が安全です)。(UN Trade and Development (UNCTAD))
  • 排出ガスの内訳:温室効果(100年係数換算)で見ると、**大半はCO₂(90%超)**で、黒炭(Black Carbon)などが一定割合を占める、という整理が示されています(研究の前提・範囲により推計差あり)。(スミススクール)

2. 他部門との比較(世界全体)

2-1. 主要部門(WRIの整理例)

WRIの整理では、**エネルギー関連が約75.7%で、その内訳として電力・熱 約29.7%/輸送 約13.7%/製造・建設 約12.7%**などが示されています(データ年・算定範囲に依存)。(Our World in Data)

2-2. 輸送モードの相対位置

国際海運は、輸送部門の中でも「単位輸送あたりの効率が比較的高い」と言われる一方、輸送量が大きいため総量として一定の排出規模を持つ、という理解が一般的です(ただし、モード間比較は前提条件で結論が変わり得ます)。(スプリンガーリンク)


3. 国際海運の内訳(船種別:CO₂排出シェアの例)

ICCTの研究(2013〜2015年の推計)では、CO₂排出のうち**55%**を次の3船種が占める、と整理されています。(国際クリーン交通評議会)

船種CO₂排出シェア(例)
コンテナ船約23%
ばら積み船(Bulk)約19%
油槽船(Tanker)約13%
その他(一般貨物船、Ro-Ro、客船 等)約45%

※この種の内訳は、対象年・対象範囲(国際/国内、燃料、活動量推計)で変動します。**「目安として」**扱うのが安全です。(国際クリーン交通評議会)


4. 将来見通し

  • IRENA(IMO第4次GHGスタディ等を踏まえた整理)では、適切な追加政策がない場合、海運GHG排出が2008年比で+50%〜+250%増加し得る、という幅のある警告が示されています。
  • 一方で、Transport & Environmentは、現行の成長前提が続く場合という条件付きで、2050年に海運が世界排出の約10%を占め得るという見立ても紹介しています(※前提が強い推計である点の明記が重要)。(T&E)


5. 国際的な規制・政策動向(要点)

5-1. IMO(国際海事機関):2023年の戦略改定(目標であり、達成手段は今後の制度設計に依存)

IMOは2023年に戦略を改定し、2050年前後のネットゼロを掲げ、2030年:2008年比20〜30%削減/2040年:70〜80%削減といった中間目標を示しています(※目標であり、拘束力や実装は各種決定に依存)。(IMO)

5-2. EU:2024年から海運をEU ETSに段階導入(対象・範囲に注意)

EUは海運をEU ETSに組み込み、原則として総トン数5,000GT以上の貨物船・旅客船等のCO₂排出を対象に、段階的に義務が立ち上がる枠組みが整理されています(制度の適用範囲・対象航路・フェーズインは文書で要確認)。(emsa.europa.eu)


6. 物流企業・荷主への意味

国際海運の脱炭素化は、物流企業・荷主にとって概ね次の論点に波及する可能性があります。

  • コスト:EU ETS等の導入航路では、炭素コストが運賃・サーチャージ・契約条件に反映される可能性。(emsa.europa.eu)
  • 開示(Scope3):輸送由来排出の算定・説明の要請が強まる方向(特にグローバル企業との取引)。※算定ルールは各基準・顧客要件で異なるため要確認。
  • 競争:「低排出な輸送オプションの提示」や「排出データの透明性」が、提案力・選定要件の一部になる可能性。(T&E)

7. 実務チェックリスト(物流経営者向け)

A. まず押さえる(1〜3か月)

  • 自社の主要航路(EU寄港の有無、5,000GT以上船の利用比率など)を棚卸しする(対象範囲の把握)。(epa.ie)
  • 主要キャリア/フォワーダーに「排出データ提供の可否」「EU ETS等の費用反映の考え方(透明性)」を確認する。(emsa.europa.eu)
  • 自社のScope3算定で、海上輸送に使う活動量データ(重量・距離・コンテナ本数等)の整備状況を点検する。

B. 次に進める(3〜12か月)

  • 航路別に「コスト上振れシナリオ(複数)」を置き、見積条件・契約条項(サーチャージ条項等)の論点を整理する(※個別契約は専門家確認が無難)。(emsa.europa.eu)
  • 低排出燃料・省エネ運航・船隊更新など、キャリア側施策の“実装度”を比較する(提案要求仕様に反映)。(IMO)
  • 「排出削減(実排出)」と「クレジット等(相殺)」を区別して社内方針を整理(顧客説明の一貫性)。

C. 中期(1〜3年)

  • IMO戦略(2050ネットゼロ/2030・2040目標)の進展を踏まえ、航路・荷量計画と脱炭素要件を一体でレビューする。(IMO)
  • 主要顧客の調達要件(低炭素輸送、排出データ提出、監査等)を定点観測し、提案・運賃設計に織り込む。

参考文献(クリック用)

  • IMO:Fourth IMO GHG Study(国際海運の排出量・シェア等)(スプリンガーリンク)
  • ICCT:船種別排出シェア(2013〜2015年推計)(国際クリーン交通評議会)
  • Smith School(研究整理):海運の温室効果内訳(CO₂が90%超等)(スミススクール)
  • WRI:世界排出の部門別シェア(電力・熱、輸送等)(Our World in Data)
  • IRENA:将来の増加幅(2008年比+50〜+250%など)
  • Transport & Environment:条件付き推計(“現行トレンド継続”で2050年に10%等)(T&E)
  • EU ETS(海運拡張の概要):EMSA資料、各国当局/解説(5,000GT以上、フェーズイン等)(emsa.europa.eu)