1災害支援における日系物流企業の役割
(1) 物資輸送・拠点運営支援
- 各社は国・自治体と「災害時協定」を締結し、支援物資の輸送・保管・仕分け・配送を担当。
- 例:
- 日本通運(NXグループ):東日本大震災・熊本地震・能登地震で緊急物資輸送を実施。
- ヤマト運輸:災害時支援協定(全国130以上の自治体)に基づき、宅急便車両を支援車両に転用。
- 佐川急便:避難所向け物資配送を担当、全国拠点を「中継センター」に転用。
(2) 官民連携ネットワークの活用
- 国交省・経産省の「災害時物流支援ネットワーク」に参画。
- トラック協会やNEXCO、フェリー・鉄道会社などとの協調により、**多層輸送ルート(モーダルミックス)**を確保。
(3) 現場の課題発見と改善提案
- 被災地現場から「どの物資が・どこに・どれだけ必要か」を即時に把握し、供給計画を提案。
2 災害支援物流の構造的な問題点
① 物流インフラの寸断 道路・港湾・通信の被害で輸送停滞 広域災害ほど代替ルートが確立されていない
② 物資拠点の人員不足・運営遅延 行政職員中心で物流専門人材が少ない 民間ノウハウの共有体制が限定的
③ 情報連携の断絶 ニーズ情報・物資在庫情報のリアルタイム共有が困難 各機関間でシステムが統一されていない
④ 車両・燃料・人材の不足 被災地内で配送可能な人材・燃料が枯渇 遠隔支援への依存度が高い
⑤ 災害支援業務の収益性の低さ 緊急対応が多く、採算性が低下 社会貢献として位置づけられがち
3 対策
(1) 災害対応ロジスティクスの標準化
- 倉庫管理・仕分け・配送手順を統一化し、平時から「模擬演習(ロジ訓練)」を実施。
- 国・自治体・企業間の統一オペレーションマニュアルの策定。
(2) 情報プラットフォームの共通化
- WMS(倉庫管理)・TMS(輸送管理)・GIS(地理情報)を統合した災害ロジスティクス情報共有基盤の構築。
- 民間企業のシステム(ヤマトのe-お知らせ、佐川の動態管理など)を災害時モードで連携。
(3) 官民連携の深化
- 自治体・防災庁との協定更新時に「実動訓練」義務化。
- 災害時の人材派遣スキームを明文化(ロジスティクス専門家の派遣制度)。
(4) 持続可能な支援体制の構築
- ESG経営と連動し、「災害対応=社会的価値創出」としてKPI化。
- 三菱倉庫・日通などは、サステナビリティ報告書に防災・復旧貢献の指標を明示。
(5) 地域密着型の分散拠点整備
- 「シェアリング倉庫」や「マイクロ拠点」を活用し、被災地域周辺で分散備蓄。
- PPA(電力自給型倉庫)による災害時稼働の自立性確保。