1. 環境(E: Environmental)

物流はエネルギー消費とCO₂排出が大きい産業であり、気候変動対策が最も重要な課題の一つです。

  • カーボンニュートラル化:電動車両、持続可能な航空燃料(SAF)、再生可能エネルギーによる倉庫運営が求められる。
  • 顧客ニーズ対応:荷主企業自身もSBTiやScope3削減義務を負うため、低炭素物流サービスを選択する傾向が強まっている。
  • 規制リスク対応:EU-ETSやGX-ETSなどのカーボンプライシング導入が進む中、環境負荷削減を進める企業ほどコスト競争力を確保できる。

2. 社会(S: Social)

物流業は労働集約的であり、人材確保・地域貢献が企業の信頼性を左右します。

  • 労働環境改善:自動化・DXによる過重労働の軽減、女性・外国人労働者の活躍推進。
  • 安全・安心の提供:災害時の緊急物流やワクチン配送など社会インフラとしての役割。
  • 従業員エンゲージメント:ESG理念を社内文化に組み込み、誇りを持てる職場にすることで人材流出を防ぎ、サービス品質向上につながる。

3. ガバナンス(G: Governance)

サプライチェーン全体に透明性を求められる時代において、ガバナンスの強化が信頼性を担保します。

  • サプライヤー行動規範の導入による持続可能な調達。
  • 非財務情報開示(TCFD・ISSB・統合報告)を通じた投資家・顧客への説明責任。
  • リスクマネジメント:地政学リスクや災害リスクに対応したレジリエントな物流網の構築。

4. 企業戦略との統合

ESG経営は、単なるCSRではなく「成長戦略そのもの」です。

  • 新サービス創出:DHLの「GoGreen Plus」のように、CO₂削減を顧客に販売するモデルが収益化に直結。
  • 差別化戦略:同業他社との差をつけ、グローバル企業や大手荷主のサプライチェーンに組み込まれる条件となる。
  • 投資家評価:ROIC/WACCに加え、ESGスコアが株価や資金調達コストを左右する時代に。