『資本主義再興』コリン・メイヤー
企業は株価動向を重視するようになったため、この問題は深刻化している。その結果、株主や経営者の利益と、それ以外の人々との乖離が一段と大きくなった。利益を上げること自体は問題ではない。問題なのは、利益が何からうまれたかであり、利益は問題解決だけでなく問題を発生させることによっても生み出される。
経済学の観点からは「単純明快な経済モデルが、競争市場の力や金融の効率性、違法行為を抑制する規制の能力に対する誤った信念を生み出した」と言える。社会学の観点からは「一部のエリートが、他社と自然環境の犠牲から利益を得る状況を維持するため、既得権益の力が働いが結果である」と歴史学の観点からは、「アダム・スミスの『国富論』に熱狂する一方で『道徳感情論』を忘れてしまったから」と説明できる。
私たちはなぜ企業を立ち上げ経営するのか、その理由が忘れ去れている。企業を立ち上げ経営するのは、利益を上げるためではなく、問題を解決するためだ。あなたや私、社会、自然界が直面している問題を解決し、その過程で利益を生み出す。利益は企業の生命線であり、利益がなければ、問題解決に必要な多額の資金を投じる投資家を確保できない。しかし、利益はパーパスではなく、問題解決というパーパスから生まれるものだ。