【1. 日本経済への影響】日本の対米輸出額 約18〜19兆円(2024年)

➡ 25%の関税で最大20〜30%の縮小(約4〜5兆円減)
GDPへの影響 輸出・投資・所得乗数効果を加味

➡ 実質GDPを0.4〜0.6ポイント押し下げ
産業別影響 – 自動車産業:打撃最大(対米完成車輸出の6割が影響)

– 電子部品・機械・物流:輸出減+SC混乱

– サプライヤー・中堅企業への波及
雇用 零細・部品下請け含めて5万〜10万人規模の雇用調整圧力(製造業中心)

為替 為替はリスクオフで一時円高へ(→円高・輸出採算悪化)

その後、経常黒字縮小で円安傾向に反転の可能性あり

【2. 日系グローバル物流企業への影響】

分野 影響内容国際輸送需要の変化 米向け完成品輸送は減少傾向。

代わりに 東南アジア経由品(第三国加工品) や部材の多段階輸送が増加傾向。

輸送コストと関税対応支援需要の増加 関税コストの回避策(HSコード最適化、輸送証明書、FTA原産地証明取得)支援のニーズ増加。

輸送ルートの再編 米国直行航路から ASEAN→中南米/ASEAN→北米といった多段ルート対応が必要に。

3PL/4PLの機会拡大 荷主が最適ルートを求め、物流企業に設計・通関・保険・リスクマネジメントを一括委託する動きが加速。

輸送量の減少 対米完成品・中間財輸送が大幅減少(特にRORO船、コンテナ海運、航空貨物)

代替需要の発生 ASEAN・メキシコ・インドなど生産移転後の複雑SC輸送需要が増加(多段輸送・3PL活用)

新規業務需要 原産地証明、関税回避スキーム設計、FTA戦略コンサルティングなど非価格型付加価値業務が拡大

【3. 対応策】

日系物流企業の具体的戦略分野 対策例SCM再構築支援 – ASEAN(タイ、ベトナム、インドネシア)への部材・組立拠点移転を前提にしたルート設計支援

– 日本→ASEAN→北米の**“コンプライアンス対応型ルート”**の定型化
FTA・EPA活用支援 – EPA原産地証明取得代行・ナレッジ提供サービス

– RCEP/日EU/日米貿易協定等の多層FTAレイヤーの最適適用支援
価格競争力強化 – 米向け直行便のスペース契約を維持しつつ、ケープ経由・パナマ代替などのスポット輸送も確保

– BAF(燃油調整費)+戦争保険料含むオールイン料金の見える化
通関・規制対応体制の強化 – NAFTA後継のUSMCAやインド関税制度への最新対応

– デジタル税関書類・e通関支援(米国CBP ACE連携など)

顧客支援型DXの拡充 – 関税+物流コストの可視化ダッシュボード

– HSコードの変更・再分類によるコスト差試算(AI+人力審査の併用)

“China+1+NAFTA”などの複層SC再設計

• ASEAN・メキシコとの連携倉庫・複合輸送の整備

投資家対応 • 日系製造業/物流銘柄のEPS一時下押し予測に備えた説明責任強化

• 対応力をIRでアピール(SCリスク耐性・再編)

4関税25%は「直接打撃+再編チャンス」

関税25%は確実にマイナスショックだが、構造変化は新たな需要と雇用を生み出す契機にもなり得る。

成否を分けるのは、複雑化するSCに対応する「リスク吸収力」と「再編実行力」。

特に物流企業は、FTA支援・サプライチェーン再設計・輸送一体型提案によって、単なる“運び屋”から戦略支援パートナーへと昇格できるかが勝負どころ。