これからの資本主義は 株主資本主義、ステークホルダー資本主義）を越え、
① 地球と社会を “損なわず” ではなく “再生させる” 「リジェネラティブ（再生型）資本主義」
② 国益／安全保障を露骨に織り込む「国家介入型（FT が “stick-holder” と呼ぶ）資本主義」
の 二つが並行して台頭 すると見る向きが有力です。
再生型資本主義（Regenerative Capitalism）と国家介入型資本主義（State-Interventionist Capitalism／いわゆる“Stickholder Capitalism”）を、理念・制度・企業への影響・グローバル動向などの観点から整理します。
再生型 vs 国家介入型資本主義
| 観点 | 再生型資本主義 (Regenerative) |
国家介入型資本主義 (State-Interventionist / Stickholder) |
|---|---|---|
| 目的 | 地球・社会の再生（net positive） | 国家利益・安全保障の確保 |
| 価値観の中心 | 生命系・自然資本・地域社会 | 国益・主権・戦略物資の確保 |
| 起源・背景 | 気候危機／生物多様性の劣化／グリーンウォッシュ批判 | 米中対立／戦争・パンデミック／技術主導権争い |
| 代表的な動き | • WEF「再生資本主義」構想 • Patagonia, Interface 等の企業 • B Corp＋自然資本会計 |
• CHIPS法／IRA（米国） • 中国の国有企業強化政策 • 欧州の経済安全保障法制化 |
| 主な政策手段 | ESG投資の深化、自然資本会計、社会的インパクト評価 | 補助金、ゴールデンシェア、輸出規制、技術移転の制限 |
| 企業に求められること | 地域・自然・従業員への純正の利益供与（regenerative KPI） | 自国内投資、雇用維持、技術の国内維持（例：半導体工場） |
| 資本の方向性 | 長期・ローカル志向・循環志向 | 国内優先・戦略産業集中・短期成果を伴う補助金活用 |
| 競争原理の変化 | 持続可能性 × 社会共創力が企業価値の源泉 | 国家との同盟性・協調性がビジネスのライセンス |
| 企業のリスク | 再生性が曖昧なら「グリーンウォッシュ」批判 | 国家からの監視・介入、民間企業の主権制限 |
| 注目される用語 | Net Positive / Doughnut Economics / Natural Capital / Just Transition | Economic Security / Reshoring / Golden Share / Friend-shoring |
再生型資本主義（Regenerative Capitalism）
- 概要：単に“傷つけない（サステナブル）”ではなく、自然環境・地域・人間社会にポジティブな再生的インパクトをもたらす経済活動を指す。
- 先進企業の動き：
- Patagonia：売上を生態系再生・気候活動に全額投入。
- Interface社：カーペット製造で“カーボンネガティブ”を達成。
- Unilever：自然資本KPIを会計へ導入。
- 投資面では：気候債券（Green/Blue Bond）や自然再生REITが発展。
国家介入型資本主義（Stickholder Capitalism）
- 概要：「自由市場はもはや国家の安全を守れない」として、政府が企業活動に直接的に関与。特に先端技術・エネルギー・軍事・半導体など
- 企業への影響：
- 「経済活動 ≒ 外交の延長線」となり、政治リスク・契約制限・技術開示義務が増える。
対立か？両立か？
実際には、
- 短期的（2020年代）：地政学優位で国家介入型が表に出やすい。
- 中長期的（2030年代）：気候・社会包摂への圧力が再生型の主流化を促進。
「国家の要請に応えつつ、社会と自然に再生的価値を提供する」というハイブリッド型資本主義が次世代の現実的な経営条件です。
企業への戦略的提言
| 項目 | 対応策 |
|---|---|
| グローバル対応力 | 政府・地域ごとに「求められる忠誠」が異なる → マルチステークホルダーマネジメント体制の構築 |
| 開示と対話 | 自然再生・地域共創のKPIを統合報告書・IR資料に反映し、投資家と信頼構築 |
| 資産構成の見直し | 拠点・資本・知財・データを国別にセグメント化し、「国家干渉・強制リスク」を定量評価 |
| 再生＋防衛型のポートフォリオ構築 | 一部事業は国家安全保障向け（例：EV・半導体）、一部は再生志向（農業・観光・自然資本）に分散展開 |
