中国におけるヒューマノイドロボット開発は、二足走行の安定化フェーズを超え、AI・産業活用拡大へと急速に進展
開発状況(2023–2025年)
1. 量産・商用化フェーズへ
- 2024年には上海のFourier Intelligenceが、介護分野向け「GR‑1」を世界初の量産型ヒューマノイドとして発表
- 複数の企業が2025年に年間1,000台以上の量産に向けて動いており、市場規模は約6 億1,600万ドルに達する見込み 。
2. 高機能モデルの登場
- Tiangong(天宫):北京イノベーションセンターが開発した163cm/43kgの電動ロボ。6km/hで走行でき、階段も克服
- Qinglong(青龍):フルサイズ一般用途。上海フォーラムで、パンや果物の仕分けなど細かい動作を披露
3. スタートアップの台頭
- AgiBot(上海):2023年創業、2024年末には工場量産体制を整備。RAISE A1など複数モデルをリリースし、1,000台近く出荷済み
- Unitree Robotics:従来の四足歩行から二足走行ヒューマノイド「G1」を展開。バク宙やカンフーなど高難度動作を実証
- EngineAI(深圳):2024年にSE01/PM01を公開。前宙返りを行う動画も公開し注目を浴びる
- Leju Robot(深圳):2016年創業でマス生産体制が整い、2025年に100台出荷
- Zerith:ホテル清掃特化ロボH1を開発し、商用導入に向け準備中
- UBTech(深圳):Walker Sなど産業特化モデル拡充、工場や医療現場へ展開予定
4. 政策と補助
- 政府は約3,000億円超(約20 B USD)の補助金を支給し、AI・ロボティクス分野の起業や研究を奨励 。
- 部品面ではEVと重なる供給網が活用され、部品コストが低下し開発が促進 。
今後の展望と課題
A. 普及と産業用途の拡大
- 工場、倉庫、ヘルスケア、ホテル清掃、家庭支援など、用途別に展開が加速中。
- 世界初のヒューマノイドマラソン開催も実現し、社会受容性の向上が期待 。
B. AI・部品の自給強化と価格競争
- ディープシーク等のAIエコシステムと融合し、自社開発を推進 。
- サプライチェーンでの部品内製化が進み、コスト競争力が強化 。
C. 量産化への転換点
- 2025–2026年には「第2世代」モデルの量産化フェーズに突入
- Open‐source展開(Tiangong母体)、プラットフォーム共有で開発スピードを加速
D. リスクと競争激化
- 多くのスタートアップが市場から退出する可能性もあり、再編が進む見通し 。
- 米中間のハイテク摩擦により、AIチップ制限・部品調達問題が懸念
グローバル競争との比較
- 中国は**「身体」側のハード技術と製造力**で優位にあり、米国はAIソフト側で強み (businessinsider.com)。
- しかしサプライチェーン制限や補助金の不確実性もあり、総合力向上が鍵。