『経済成長の起源』マーク・コヤマ; ジャレド・ルービン.
長期的な観点から見た場合、イノベーションに対するインセンティブは市場を通じて育まれている点のほうが重要だ。産業革命のような成長減少は、政策立案者によって計画されたものではないのだ。新しい生産方式を試したり、新しい工場を建設したり、生産を機械化したりしようとする無数の個人の決断の結果がもたらしたものなのである。
言うまでもなく、計画経済のもとでも経済を成長させることは可能だ。短期的に見た場合、むしろ市場経済よりも早く成長させることができるだろう。なぜなら、政策決定者は資源を強制的に動員できるからである。
しかし、イノベーションが繰り返されず、投資決定を調整する市場が存在しなければ、どれだけ労働力や投資を増大させようと、やがて収穫逓減の状態に直面する。ソ連のような計画経済は、軍事上のイノベーションには長けていたが、消費者が実際に買いたいと思うような新しい商品をまったく提供できなかった。