1. 物流効率化法の改正(正式名称変更:物資の流通の効率化に関する法律)
(1) 改正の目的
- 物流業界の 2024年問題(トラックドライバーの時間外労働上限規制) により、労働力不足が深刻化。
- 効率的な物流の促進により、 トラックドライバーの負担を軽減し、持続可能な物流体制を構築 することが目的。
(2) 具体的な改正ポイント
① 物流効率化の努力義務
- すべての 荷主 および 物流事業者 に対し、以下の取り組みが 努力義務 として課される。
- 荷待ち時間の短縮(トラックの待機時間を減らす)
- 積載効率の向上(積載率を高める)
- 物流施設の集約化・共同配送(無駄な輸送を減らす)
- IT活用による業務効率化(電子契約やデジタル化の推進)
② 特定事業者の指定
- 一定規模以上の荷主・物流事業者 を 「特定事業者」 に指定し、以下を義務化。
- 中長期計画の作成(物流の効率化計画を策定)
- 定期的な報告義務(実施状況を国に報告)
- 物流統括管理者の選任(組織的に物流改善を進める)
→ 特定事業者に指定されると、企業は 物流戦略を明確化し、計画的に効率化を進める必要がある。
③ 共同輸配送やインフラ利用の促進
- 企業間での共同配送を推奨(同じ地域・業種の企業が協力して配送)
- 鉄道や船舶の活用促進(トラックの長距離輸送を減らす)
- 国による支援策(インフラ整備や補助金の活用)
2. 貨物自動車運送事業法の改正
(1) 改正の目的
- 運送業界の取引適正化 と 安全確保 を強化。
- 特に 「多重下請け構造」 や 「低賃金問題」 を解消するため、契約ルールを厳格化。
(2) 具体的な改正ポイント
① 運送契約時の書面交付義務
- 運送契約締結時 に、以下の内容を記載した 「契約書の書面交付」 が義務化。
- 運送内容(荷物の種類・量・距離・時間)
- 運送対価(運賃・料金の明確化)
- 契約条件(責任範囲、支払い期日など)
→ これにより、「口約束で契約内容が不明確なまま発注される」問題を防ぐ。
② 実運送体制管理簿の作成義務
- 元請運送事業者 に対し、以下を 記録し、国に報告する義務 を新設。
- 誰が実際に運送を担当したのか
- どのような契約で仕事を依頼したのか
- 運賃の内訳(適正な料金が支払われたか)
→ 「多重下請け」による中間マージンの問題を明確化し、適正な取引を促進。
③ 軽貨物運送事業者(個人事業主)の規制強化
- 軽トラックを使用する個人事業主(フリーランス配送員) についても、新たに以下の義務を設定。
- 運行管理者の選任(安全管理を徹底)
- 定期講習の受講(交通安全教育)
- 事故発生時の報告義務(責任の明確化)
→ Uber Eats や Amazon Flex など、個人委託ドライバーの増加 に伴い、安全管理を強化。
3. 企業への影響と対応策
(1) 物流業界の対応
✅ 大企業の荷主は「特定事業者」に指定される可能性が高いため、早めの対策が必要
✅ 書面契約義務化により、従来の「口約束」や「曖昧な契約」を見直す必要がある
✅ 運賃の適正化を進めることで、運送事業者の持続可能性を高める
(2) 実務対応のポイント
- 物流業務の可視化とデータ分析(ITを活用した物流管理)
- 取引先との契約の見直し(新しいルールに対応するため)
- 共同配送・モーダルシフトの導入(鉄道・船舶の活用)
→ 特に「荷主企業」は、単に「運送業者に委託する立場」から、「物流の効率化を推進する責任を負う立場」に変わるため、対応が急務。