『意思決定論』宮川公男

意思決定は管理者の重要な職能である。それは極めて重要な機能であって、たとえばサイモンはそれを管理すること(managing)と同義語のように考えても良いとしているほどである。これに対して後に情報→決定→行動というプロセスを考え、情報に決定に変換する意思決定と、決定を行動に変換するリーダーシップの2つを管理者の職能と考えている。

これはいうまでもなく、意思決定やリーダーシップという用語をとくに厳密に定義することなくきわめて大まかに管理者の職能を総括したものであるが、よくマネジメントとは人々によって仕事をなさしめることであるいわれることを考えると、自らの意思決定を組織内の人々の行動に結び付けるプロセスを、意思決定と別にリーダーシップとして便宜的に分けてみることも有用である。

このように考えると、これまでに概観してきた諸潮流のうち経営科学やまねじりある・エコノミクスは意思決定に対する規範的指針を与えるものとして意思決定のプロセスに、そして行動科学は組織における人間行動についての基礎的な理解を与えるものとしてリーダーシップのプロセスに、それぞれ最も深いかかわりを与えるもつということができる。

しかしながら、意思決定とリーダーシップは相互依存的な職能であって、いかにすぐれた意思決定がっても強力なリーダーシップの指示がなければ、またいかに強力なリーダーシップがあっても優れた意思決定が前提されなければ、マネジメント・プロセスは効果的なものではありえない。 従って、意思決定論は意思決定の科学だけを扱うものであってはならない。