ジョージ・セラフィム HBR Jan.2021

ESG戦略はなぜ重要なのか

第1に、ESGの重視は、資本コストを引き下げて企業評価を高めるうえで有用である。なぜなら、優れたESGパフォーマンスを上げる企業に資本を拠出しようとする投資家が増えるにつれて、この種の企業により多くの資本が集まってくるからだ。

第2に、世界の規制機関や政府がESGにまつわる情報開示を義務付ける傾向が強まる中、ESG分野での前向きな取り組みや透明性は自社の評価を守る一助となる。

第3に、サステナブルな取り組みを着実に実施する努力は、取締役会の指導力に対する株主満足を損なわないためにも有益だろう。

最後に、これが最も重要なのだが、ESGの取り組みは長期戦略の一環であり、すべての企業が、将来に向けた経営陣のビジョンや計画への支援を株主から取り付ける必要がある。

では、他社に先駆けてESGの取り組みから実利を得るには、どうすればよいのだろうか。効果的なESG施策を展開する企業を対象に研究や助言を行った経験からは、経営陣による5つの取り組みが有効だと判明している。

①戦略性の高いESG施策を採用する、②ESGインテグレーションを念頭に置いた責任体制を築く、③パーパスを突き止めて、それを柱にした文化を培う、④ESG戦略の成功に向けて業務オペレーションを変革する、⑤透明性の確保や投資家との関係構築に尽力する、である。