ゲイリーP.ピサノ HBR Jun.2024
自分たちが下すべき重要な判断と、それに伴うトレードオフを理解したリーダーである。
良い成長戦略立案者は、自社の持続可能な成長率を損なう財務以外の制約ーシステム、プロセス、人材、文化などーを明確に認識している。ケイパビリティの範囲を超えた成長は、短期的には実現できるにせよ、それを長く続けなければ評判や文化に永続的なダメージを与えかねないことをわかっているのだ。
また、良い戦略立案者は、とりあえず急速な成長を遂げて、後から手直しすればよいという思考の罠に陥らない。より慎重な成長を長期的に続けた方が、短期的に爆発的な成長を遂げるよりも、はるかに優れた財務成果をもたらすことをよく知っている。
一方で、卓越した成長戦略立案者は、将来の成長に向けた選択肢を増やすための新たなリソースやケイパビリティの継続的な蓄積に力を入れる。また、研修、プロセス、システム、テクノロジー、文化に対する投資とは、成長のボトルネックを解消し、持続可能な成長率を押し上げる手段だと考える。
そして、何にもまして人的資本を重視する。企業の成長潜在性を形づくる多くのリソースの中でも、従業員の質、才能、マインドセットが最も重要だと捉えている。
利益を伴う持続的な成長の達成はけっして容易ではないが、適切な人材がいなければそもそも不可能だということを、卓越した成長戦略立案者は理解しているのだ。