『アジア史概観』宮崎市定

自然を相手にするから無理せず、功をあせらず、名を求めず、困苦に耐え、運命に忍従するのが徳川三百年の間に培われたきた百姓のモラルであったが、歴代の歴史はこれを食い潰して、別の無駄なエネルギーに変形し発散させてしまうように導いてきた。

自然の資源の少ない日本においては、モラルの資源を愛護することを知らなければ、表面的にはどんなに経済成長を遂げようとも、見かけだおしのその繁栄はけっして長くつづくものではない。

いわゆる経済の高度成長も、短期間で達成できたものは、また短期間で失いやすいと覚悟しなければならない。

Originally posted 2020-05-02 10:58:06.