ポルトガルは、大航海時代を切り開く様々なイノベーションを創出したが、物流のグローバル化の面で組織的には、取引コストの大きいピア・グループのまま組織化されることなく、国力の衰退と共に、その役割を終えていった。

物流のグローバル化に大きな役割を果たしたオランダ東インド会社は、ピア・グループよりも組織化が進み単純階層組織になり取引コストが削減した。しかしながら組織の不条理により専制的なガバナンスが維持され、ガバナンスの民主化が進まず、取引コストの大きい組織は維持されたままであった。

イギリス東インド会社は、オランダ東インド会社よりも組織化が高度化し階層組織化も進み、ガバナンスの民主化も進んでおり、オランダ東インド会社より組織の取引コストは小さくなっていった。しかしながら、組織の不条理を生む独占的組織は社会的に受け入れられずに解散することとなった。

オランダ東インド会社、イギリス東インド会社は、約200年間継続したグローバルな会社であった。時代の外部環境に合わせて変化していったが、特権会社で国家、政治家、株主などの関与が深いため取引コストが極めて大きく、何度もあった変革の機会を組織の不条理で見送ることになり、変化に対応しきれずに消滅していった。

両会社から学ぶことは、取引コストを減らす重要性である。取引コストを減らすために、具体的にはどうすれば良いのか。菊澤の指摘がヒントとなる。

組織が絶えず非効率や不正を排除しながら改善していけば、改悪の不条理に陥ることはない。こうした組織は、絶えず未来に向かって進化する「開かれた組織」なのである。開かれた組織とは、外部からの批判をむしろこちら側から積極的に受け入れ、それをもとにして自ら変革する自律的な組織である。

組織の取引コストを減らすため、外部環境にあわせて自ら変革する自律的な開かれた組織を構築することは時代を問わず経営組織に求められることであろう。

Originally posted 2020-02-20 22:14:31.