コロナ禍による巣ごもり需要の急拡大による世界的なサプライチェーンの混乱で、世界的に物流コストに大きな変化生じています。

国際海上コンテナ運賃は、中国~米国西海岸向けで20フィートコンテナあたり2019年2000ドル程度だった運賃が、2021年4月には4000ドル、さらに6月には4000ドルを超えるような状況です。

日本発欧米向け航空貨物運賃も2019年4月の2~3倍となっています。

これらは、急激に増加する物流需要に供給側の物流キャパシティーが直ちに対応できない状況で生じている価格調整と言えます。国際物流は巨額の設備投資が求められる業務であり、国際海運業、国際航空貨物業などに参入できる企業は大企業だけですから、プレイヤーも限られることも影響していると思われます。

ただし、巣ごもり特需が落ち着くか、物流キャパシティーが増加すれば、物流価格も直ちに下落します。特に国際海上コンテナ運賃は極端に低下することが予想されます。これまでも破滅的な運賃競争を繰り返してきました。その結果、耐え切れずに邦船3社も1社に統合する結果となっています。

国際海上コンテナ業界で激しい競争を繰り返して物流供給を絞ってきたところに、コロナ禍が始まったたため、今回の運賃高騰を招いているといえます。特に、国際海上コンテナ輸送市場は完全自由競争に近い市場ですから、価格調整機能も働きやすいといえます。

日本国内の状況はどうでしょうか。最大の物流業態であるトラックの事例で検討したと思います。

数年前からトラック運転手不足を背景として、また、政府・業界団体によるトラック運賃収受の適正化の働きかけなどにより、トラック運送費は値上げされてきました。ヤマト運輸の宅配便に代表される運送費用の見直しが端的な例です。

現状は、巣ごもり需要の急拡大、サプライチェーンの混乱によって物流需要は高まっているのは同じです。

しかし、2020年あたりからトラック運送費は低下してきています。背景としては、国内飲食業界、建設業界などの物流需要減少などが影響しているようです。また、コロナ禍による失業した労働者が個人事業主として宅配業務などに携わる事例も多くなってきており、EC事業者によってはこうした個人事業主を活用することで物流コストを抑える動きもあります。

トラック運送企業は約62000社(個人事業主は除く)存在し、99%以上が中小企業の業界です。企業数は減少してきていますが、それほど極端の減少していません。供給側が絞られていないことは、トラック運賃低下の理由の大きな要因といえると思います。

コロナ禍の現状でもトラック運賃が低下している状況です。今後、巣ごもり需要が減少すれば、供給が絞られない限り、トラック運賃の更なる低下が予想されます。