社員への権限委譲は非常に難しい経営課題です。社員のモチベーションアップのためには、大幅な権限委譲が重要です。一方で、中小企業では社長の役割が非常に大きいため、過度な権限委譲は会社を傾かせる恐れもはらんでいます。また、権限委譲という言葉は、管理の放棄という危うさもはらんでいます。社長が管理を忘れて、成り行き経営陥る危険性もあるのです。

どの程度の権限委譲すればよいのか、しない方がよいのか、これは企業の置かれた状況や、社長と社員との関係、企業風土などさまざまな要因がからむため、一律に規定することはできません。

ただ、一ついえるのは、人の集まりである企業が活性化され、ダイナミズムを発揮している企業は、社長と社員の方向性が一致しており、活気があるということです。その中で、社員と社員一人一人に課されたあたりまえの役割をあたりまえにこなしているという事実です。

特別に権限委譲などといった難しい言葉を使わなくても、自然と役割分担が行われているというのが本当のだろうと思います。そうした企業ははた目からみても活気が合って、非常に魅力的です。社長と社員が良くコミュニケーションをとっているという共通点があります。

コミュニケーションの方法もさまざまですので、型にとらわれる必要はないと思います。大切なのは、社長と社員が、会社のこと、仕事のこと、生き方のこと、家族のことなど、さまざまなことを本音で語りあい、励ましあう場を作ることだろうと思います。