濱田 篤郞. 『パンデミックを生き抜く 中世ペストに学ぶ新型コロナ対策』

•11 世紀 以降 は イスラム 勢力 が 一時 よりも 衰退 し、 ヨーロッパ 勢力 が その 失地 を 回復 する 時代 で ある。 この 動き として 一番 大きかっ た のが、 12 ~ 13 世紀 に 行わ れ た 十字軍 の 中東 への 遠征 だっ た。 この 遠征 時 の 海運 を イタリア の ベネチア や ジェノバ などの 都市 が 担当 し、 それ まで イスラム 勢力 に 独占 さ れ て い た 地中海 航路 が ヨーロッパ 側 に 取り戻さ れる。 また、 東洋 からの 貿易 を 独占 し て い た エジプト や シリア が 衰退 し、 14 世紀 までには 黒海 航路 を 介する ルート が 東洋 貿易 の 主流 に なっ て い た。 この 経路 に 沿っ て 14 世紀 の ペスト は ヨーロッパ に 侵入 し た わけ で ある。   イスラム 勢力 は イベリア 半島 でも 衰退 し、 アラゴン 王国 や カスティーリャ 王国 など キリスト教徒 側 の 支配 地域 が 拡大 する。 とくに 13 世紀末 に、 地中海 の 大西洋 への 出口 で ある ジブラルタル 付近 から イスラム 勢力 が 撤退 する と、 地中海 航路 が 北海 や バルト海 の 航路 と 結ば れ、 ヨーロッパ を 取り巻く 海運 が 大きく 発展 し て いっ た。

•この よう に 14 世紀 に ペスト が 流行 する 直前 の ヨーロッパ 社会 は、 各地 で 土地 開発 が 進む とともに、 陸路 ならびに 海路 が 発達 し、 人 の 移動 が 盛ん に 行わ れ て い た。 とりわけ、 1337 年 からは フランス を 舞台 に 百年戦争 が 勃発 し て おり、 陸路 も 海路 も 軍隊 の 移動 が 盛ん だっ た。 そんな 社会 状況 下 で ペスト の 流行 が 発生 し た わけ だ が、 流行 の 拡大 スピード を 速め た 要因 の 一つ に、 こうした ヨーロッパ 内 での 交通路 の 発達 を あげる こと が できる。